「利害を調整するのが政治の役割の一つ。だから夫婦間にも政治はある」。大学で政治学のゼミに入ると、恩師が言った。縁遠いと思っていた政治がすとんと自分の胸に落ちた。以来、政治の働きに関心を持って見るようになった▼東日本大震災の復興でもそう。住民主導でまちづくりを進めた自治体では、新たな自治の息吹を感じた。例えば東松島市。復興の制度などの情報を提供し、政治の場を役所から住民に広げた。住民は議論を重ねて意見を調整し、まちづくりに生かした▼逆に政治の不在を感じることも。岩手県大槌町の旧役場庁舎の問題。解体か震災遺構として残すか、住民の意見がまだ分かれているのに、町は先月、議会に解体予算案を提出。賛成、反対が同数となり、議長裁決で可決された▼町はもっと住民に情報を提供し、時間をかけて丁寧に議論を尽くすべきだったのではないか。保存の財政負担が問題なら、新潟県中越地震の被災地に倣って公益法人を設立して管理するなどの方法もあった。熟議という言葉からは遠く、結論を急いだ印象が残る▼被災した住民には、今なお、さまざまな思いが宿る。今回のような方法を取ってしまっては、多くの住民に不満を残すことになる。「政治の役割の一つ」に思いを巡らせてほしかった。(2018.4.22)