「これ、君のポケットマネーで買ってくれんか」。パナソニック創業者の故松下幸之助さんはある政治家からこう尋ねられ、戸惑った。何億円もするような骨董(こっとう)品。「とても買えない」と断った。松下さんの著書『危機日本への私の訴え』(PHP研究所)にある▼当時、松下さんは膨大な冠婚葬祭費をそれこそポケットマネーで負担し、さっぱり余裕などない。その政治家に感じたのは「感覚のズレ」だという。こうした人が政治家では「政治がうまくいかない面が多いのもやむを得ない」と松下さんは嘆いている▼与野党対立で少しも前に進まない国会。政治家の「感覚のズレ」をほとんど毎日、目にする。元財務事務次官のセクハラ問題を巡って、被害者の人権を無視した議員や官僚の問題発言が相次いでいる▼元次官は「全体を見ればセクハラに該当しない」と語った。下村博文元文部科学相は、元次官の発言を録音し雑誌に渡した女性記者の行動を「犯罪」と発言した。麻生太郎財務相は「はめられたとの意見もある」と火に油を注ぐ▼下村さんは「日本のメディアは日本国家をつぶすために存在しているのかと思う」とも語った。なぜ批判されるのか。そこに目をつぶって批判の矛先を変えようとする。これじゃ、政治がうまくいくはずがない。(2018.4.26)