例年5月初めが満開だという山里の桜を先日、少し早く眺めた。福島県飯舘村の長泥地区。福島第1原発事故後、帰還困難区域とされた。通行止めのバリケードの内側の峠道に、見る人もない桜並木が続いている▼「半世紀以上、大事に育ててきた」と行政区長の鴫原良友さん(67)。村は昨年3月末に避難指示を解除されたが、長泥では住民が要望した除染の計画もなく、74世帯の住民の多くは福島市など避難先で新しい住まいを得た▼復興拠点。国が帰還困難区域で除染とインフラ整備を行い、住民が帰還できる場を設ける事業だ。利便な地区が条件とされ、村はずれの長泥は国から一度、対象外と扱われたが、事情は一変。県内の被災地で5番目となる復興拠点づくりがこのほど決まった▼「もろ手を挙げて賛成したわけではない。受け入れねば古里に希望は見えず、苦渋の選択だった」。再生される約110ヘクタールの農地には、除染された土が造成の資材として再利用される。環境省が先に工法の安全性を試験で確かめ、国内初の実用化事業とされる▼国は5年後までの避難指示解除を目指し、計画される公営住宅に鴫原さんも入るつもりだ。「今も草刈りや神社の祭りに20人余りが集まる。皆、60~70代だが、自分は体の続く限り古里を守りたい」(2018.4.28)