「猫神」をご存じだろうか。丸まったり、背を伸ばしたり、寝入ったり。猫の姿がリアルに彫られた石碑や石像が80余基も宮城県丸森町に残る。多くは江戸から明治の時代にまつられ、養蚕農家の守り神とされた▼生糸を取る繭を食い荒らしたのがネズミ。それを退治する猫はありがたい味方だった。「昭和40年代は2千戸以上の養蚕農家があり、生糸の生産は県内一でした。猫神はその名残」と町教育長の佐藤純子さん(62)▼自宅に機織り機が4台ある。売り物にならぬ「くず繭」も生かし、主婦が反物を織るのが地元の暮らしだった。母美穂さん(88)は伝統の織り手だが、現在は一握り。「養蚕を続ける農家もわずか5戸。それぞれが『点』の存在だった」▼「コアトリエ」(生業の共創)という活動が始まったのは昨年。元中学校長の佐藤さんは定年後に東北工大で学び、地域の資源と生業の再生を支援している大沼正寛教授(46)と出会う。学生も参加し、丸森の養蚕文化の継承者が交流する場をつくった▼5戸の農家を町民に紹介するパネル展、女性3人が守ってきた繭細工の工房づくり、「佐野地織(じおり)」という貴重な特産品を伝える取材と発信。「絹の光沢を加える『シルク和紙』の作家もいる。知恵と技を集めて新しい魅力を生み出せたら」(2018.4.29)