東日本大震災で損壊し、今春、現地再建された気仙沼市の図書館。開館に至るまでのワークショップが興味深い▼旧館敷地内のスイセンを残そうと、解体前の2016年、気仙沼小の3年生が球根を別の場所に仮移植した。表土も保存した。専門家を招き、小さな生き物が表土を分解して、それが木の栄養になると学んだ。来月、元の場所に戻す作業が始まる。担当は仮移植時と同じ児童、今の5年生だ▼「命の大切さ、つながりを伝えたかった」。企画した岡田新一設計事務所(東京)の柳瀬寛夫社長(64)が語る。移植できない巨木への思いも同じ。建物はスズカケノキ(プラタナス)4本を避けて造られた。「今の小学生の父母が子どもの頃からあった木。被災地の命と記憶を残した」▼こちらはミスで、積み上げたものを絶たれた。気仙沼市魚町で宮城県が建設中の防潮堤。計画(海抜4.1メートル)より22センチ高かった。海を遮断する壁を巡り、海の人々が時間をかけて合意した高さなのに。造り直せば堤内側の街づくりが遅れる。ならば許容するか。「造る(時の合意形成)より疲れる」。住民の声を県は何と聞く▼命を守り震災の記憶を伝える施設だ。嘆きの壁にはするまい。図書館同様、誇りあるものにできるか。あすから説明会。港町よ、再び結束を。(2018.4.30)