日本のジャズ喫茶の草分けが横浜市の「ちぐさ」。若き日の渡辺貞夫さんらが通い、創業者の故吉田衛さんは「いいミュージシャンを育てたい」と情熱を燃やした。新星発掘の「ちぐさ賞」が有名で、このほど第5回受賞者となったのが仙台市出身のピアニスト千葉岳洋(たけひろ)さん(27)▼軽やかな美しい音で自在なスイング、叙情豊かな歌心も。受賞記念の初CD「アルファ・アンド・オメガ」にはジャズの楽しさがあふれる。多彩な作曲も手掛け、プロになってまだ5年と思えぬエンターテイナーだ▼「中本マリさんと昨年共演し衝撃を受けた」と言う。同郷の大先輩である名シンガー。節回しから発音まで奥深い肉声の表現力に触れ、「自分のピアノの音の過剰さに気付かされた」。ちぐさ賞を2度逃し、突き当たっていた壁を乗りこえられた▼8歳から電子オルガンに親しみ、東北学院中・高では吹奏楽部。東京大で美術史を学ぶ傍ら相撲部主将に。好きな音楽を他大学のビッグバンドで続けるうち「ジャズのプロ志望の仲間に刺激を受けた」。22歳の失うものなき挑戦だった▼ちぐさ賞は東北と縁が深く、第1回受賞者が盛岡市出身のシンガー金本麻里さん。今も地元を拠点に歌う。千葉さんも毎月のように古里に通い「ジャズをもっと聴いてほしい」。(2018.5.4)