「記憶の限りでは、お会いしたことはない」。昨年7月以来、野党や記者団の質問にこう答えた人が突然、思い出したのか。学校法人「加計学園」獣医学部新設の問題で国会の参考人に呼ばれた柳瀬唯夫元首相秘書官▼3年前、新設の要望で首相官邸で面会した-と備忘録も作った愛媛県や今治市の職員が「随行者にいたかも」と答え、学園幹部と3回面会したと述べた。肝心の「首相案件」なる発言の記憶はあいまいらしい▼記憶は便利なものだ。小学生の間でも流行した言葉が「記憶にございません」。1976年のロッキード事件で、国会に証人喚問された実業家小佐野賢治氏が連発。「記憶にないのは偽証にあらず」との方便が政界に流布した▼この言葉、米国が家元と聞く。90年、米政府のイランへの武器秘密売却スキャンダルの裁判で証言を迫られた、当時のレーガン前大統領が「I don’t recall(記憶にない)」に終始。都合の悪い真実があられもなく隠されるのは、洋の東西を問わない▼「正直に記憶をたどってお話しされれば」。加計学園問題で先月、柳瀬氏の姿勢を問われた中村時広愛媛県知事の弁だ。「正直が最良の策」という米国のことわざがある。一番大事なのは人の信頼。政治に関わる人々に思い出してほしい原点だ。(2018.5.11)