1月1日の朝刊1面トップに「三陸 統一ブランドに」の大きな見出しが躍った。記事は「東北の官民が東日本大震災で被災した三陸地域の水産加工品を国内外に売り込むため広域連携組織の設立を検討している」と紹介している。年の初めにこの記事を持ってきたことに、本紙の被災地復興への思いの強さがうかがえる。
 記事には「世界三大漁場の多様な魚種を生かし、世界に通用する統一ブランドを構築。回復途上にある被災地の販路拡大を目指す」と書かれている。こうした地域間の広域連携、ブランド化への取り組みは、全国的にも期待されている。しかし一方で、震災後の地域の事情や取り組みに対する意識の差など多くの課題もある。
 2月11日の朝刊2面には「広域連携組織 来月設立」という続報が載った。三陸が全国のロールモデルになり得るよう、広域連携における地域間の課題解決、官民の機能的な役割分担などについて、突っ込んだ取材を続けてほしい。

 三陸沖は多様性が極めて高い海域で、海洋生物の生息数は全海洋生物の約14%に当たる3万3629種に及ぶという。しかし、三陸沖が世界三大漁場であることはあまり認知されていない。逆に「三陸沖以外の二つの漁場は?」と聞かれて答えられない日本人が多いことを考えれば、納得できる(答えはノルウェー沖の北海と、カナダ・ニューファンドランド島沖)。
 「ブランド」という言葉は、牧場の牛を識別するための焼き印(BRAND)に由来するともいわれる。他地域との違いを明確にすることが重要だ。多くの魚種が取れるという優位性は「識別」という面では記憶されにくい。魚種が豊富という魅力に別の側面から光を当ててアピールする必要があるのではないか。そこに本紙の出番があるかもしれない。
 「世界に通用するブランド」として三陸沖を見た時、魚種の多様性や漁獲量はもちろん大事だが、優れた農産物や加工技術などによって育まれた地域独自の魚食文化にも目を向ける必要がある。その意味で、「仙台づけ丼」を取り上げた夕刊の連載「仙台いやすこ歩き」27回目(1月25日)に目が留まった。2009年にデビューした新たな名物、仙台づけ丼が当初の提供店30軒から、各地で講習会を開いた成果もあって、今では120軒以上に増えているという。
 記事に「お米はひとめぼれとササニシキのブレンド。目の前にあるのは世界三大漁場・三陸の海と米どころという、宮城の豊穣(ほうじょう)を凝縮した食だ」とあった。地域の食文化、風景が目に浮かぶ秀逸な表現だった。

 食料の持続的供給や生物多様性確保の視点から「里海」という概念が国際的に評価され始めている。国連大学によると、里海とは「地域主体の管理の下、歴史を通じて育まれてきた生物多様性、優れた景観、伝統的な農林漁業技術、文化・祭礼などを含む『総合力』」である。本紙も、こうした「総合力」の観点から三陸沖の魅力に迫る取材を行っていただきたい。