15日朝刊1面に「熊本で震度7」の見出しが躍った。東日本大震災を経験した私たちにとっても、心配でつらいニュースだ。早速本紙の記者が現地に入り、16日朝刊1面で「悲しみの光景 震災と酷似」とリポート、同日の河北春秋では「私たちも今、皆さんに心を寄せている」と、被災地にメッセージを送った。
 18日朝刊の社説では「東北は、5年前の経験を生かして、きめ細かな支援ができるはずだ」と指摘している。19日朝刊社会・総合面の「避難所運営」に関する東北の関係者の助言はそれに沿った記事だった。避難所の最大の問題は「疲労と混乱」なので、休んでいる人の周りを他の避難者が歩き回らないように、居住空間の区割りを工夫することが大切だと説いている。図も分かりやすい。一つでも多くの避難所にこの情報が届くことを願う。

 熊本地震前の11日夕刊3面に「震災教訓次世代へ」という記事があった。仙台市教委が小中学生向けに防災教育副読本を発行したという。教諭向けの手引もある。タイトル通りなら、その中で役立ちそうなところを、専門家の意見も交えながら検証して被災地に届けてほしい。被災県に暮らす私たちは、いつの間にか「私たちだけの教訓」と思い込みがちになっていなかっただろうか。熊本地震はそのことを気付かせてくれる。
 同じく熊本地震前の10日朝刊13面(特集・いのちと地域を守る)に「BCP策定、被災地企業に広がる」という記事が載った。これに対して、22日朝刊経済面には「トヨタ東日本 岩手・宮城の工場休止」と載っている。BCP(事業継続計画)の観点からこれはどう検証できるのだろうか。

 ネット上に流れる情報だけで満足する人が増えて、新聞離れが指摘されているが、熊本地震のような災害時には新聞の価値が増す。16日夕刊1面、河北抄に「インターネットではデマが拡散している」との指摘がある。ネット上では、正確で緊急性の高い情報に交じってデマや不確かな情報も多く流れている。心配なのは誤った情報がコピーされて増幅し、さらに拡散されていくことだ。
 それに対して、新聞には取材に基づく記事という「品質保証」と、関連する記事を整理して伝える「編集力」がある。またネットニュースなどを利用して、新聞はより正確な情報を拡散させる力も持っている。そこに新聞の優位性がある。裏返せば、ただネット上の話題を「伝える」だけの記事では、ネットやSNSには勝てないということだ。
 本紙による熊本地震に関する報道は今後も続く。東日本大震災の被災県の地方紙として、時にきめ細かくメッセージを発し、時に検証を行いながら、より価値のある紙面作りに励んでもらいたい。

<やない・まさや氏>1958年、仙台市生まれ。福島大経済学部卒、法政大大学院人文科学研究科地理学専攻博士課程中退。岡山大文学部助教授、富山大経済学部教授などを経て、2005年から現職。経済地理学、先端技術産業の立地が主な研究テーマ。