主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が閉幕した。安倍晋三首相が世界経済の現状を「リーマン・ショック前の状況に似ている」と唐突に説明して以降、本紙でもかなりの紙面をこのことに割いた。
 首相がこの認識から消費税率10%への引き上げを再延期する意向を示したのに対して、5月31日朝刊3面には「『口実』市場手厳しく」という見出しで、複数の専門家の批判を紹介。「世界経済に下振れリスクはあるが…危機というには無理がある」「低成長を理由にするなら、この先も永久に増税できない」などの意見が載った。

 6月2日の朝刊1面トップには「首相、増税再延期を表明」「国民に信を問う」「国会閉幕、参院選へ」の見出しが躍った。「国民に信を問う」には少々違和感が残った。われわれ読者は見出しから得る第一印象で、内容を判断しがちである。首相が増税再延期について実際に「国民の信を問いたい」と言ったとしても、解説にある「参院選は『安倍政治』そのものへの評価が大きな争点」という点こそ大きな見出しにすべきではなかったか。
 2、3面にも関連記事がある。増税再延期の舞台裏で起きていた政権内部の駆け引きとしこり、地方自治体への影響、被災地首長の声などが載っていた。景気が上向いている実感が少ない地方では、増税再延期で打撃が小さくなる点は評価できるが、一方で増税分が充てられる見込みだった社会保障政策に対する不安がある。この問題の重要性、メリット・デメリットが多面的に紹介され、理解しやすくまとめられていた。
 社説は「身勝手な決断」の見出しの下、強い口調で批判している。「公約をたがえるのに自らの経済政策を一顧だにせず、原因を世界経済に求める。その姿勢は身勝手であり、無責任と言わざるを得ない」「社会保障充実策の優先順位と裏付け財源を明確にし、財政再建の新たな道筋を描く。その上でアベノミクスの成否について参院選で国民の審判を仰ぐべきだ」とある。同じ思いを抱いた読者は多かったのではないか。事実関係を伝えるのみの報道ではなく、本紙の強い意志を感じるこの社説は分かりやすく、よく理解できる。
 昨年来、日本経済の潮目が変わったと言われている。地方中小企業の経営環境は厳しく、アベノミクスの効果は実感できていない。増税はさらに経済状況の悪化を招くという不安がある。しかし、参院選で本当に信を問わなければいけないのは「日本経済再生のための政策」である。2日朝刊の4面でも「行き詰まるアベノミクス」の見出しで、現在の経済政策の見直しを迫っている。

 参院選は22日に公示される。与野党ともに単に選挙のための批判の応酬ではなく「新たな経済政策」についての議論をしてほしい。今回から18歳以上が有権者となる。本紙にも、各候補者がどこの支援を受けているなどの情報だけでなく、政策や人物像を若い世代にも分かりやすく紹介する記事を載せていただくよう期待する。