セッカヤナギやツルウメモドキが、晩秋に向かう季節を演出している。来春、新たな命が芽吹くための準備の時季。「命」のおきてを感じる日々である。
 多くの尊い命が失われた東日本大震災から5年8カ月近い歳月が流れた。10月3日の朝刊2面に載った記事「大船渡の取り組み土台 災害ケースマネジメント提言」が目に留まった。日弁連が国に提言した、生活再建支援員配置を柱とする「災害ケースマネジメント」は、大船渡市が民間と協力して取り組んできた在宅被災世帯支援の手法を参考にしたという。
 在宅被災世帯は、ともすると行政の手当てからこぼれ落ちてしまいがちだった。いまだに生活再建の目途が立たない人もいるはず。われわれが想像するより、はるかに困難を極めているだろう。ケースマネジメントは、そうした状況、さらに今後起き得る災害への初動対応から自立へ向けての、大切な仕組みになると感じる。そのような普遍的な方法の萌芽(ほうが)を東北の一自治体の中に見いだすところが、本紙の真骨頂と言えよう。

 さて、本紙の紙面構成を見ると、総じて国際関連の記事が少し薄いように思える。民主主義を尊ぶ大国のはずの米国。そのリーダーを決める大切な大統領選に関して、両候補者が激しく非難し合う記事が連日掲載されている。事実を伝えているということであっても、気持ちのいいものではない。本紙の場合、どのメディアでも大きく報じる事柄よりも、東北や宮城を活(い)かすための世界の出来事にフォーカスして取り上げると、われわれの足元の課題の改善方法も見えてくるのではないか。
 私自身、塩釜市の中心市街地で復興街づくり事業を進めている。JR仙石線本塩釜駅近くの約0.8ヘクタールを、約60人の権利者主導型の第1種市街地再開発事業で再生する。2015年5月に組合を設立し、これまで200回を超える理事会を重ねてきた。それぞれ先祖代々所有していた土地を一つにまとめて共同所有するという手法の性格上、権利者の同意を得るのに時間がかかった。
 あれだけの自然災害から商業コミュニティーの復活を果たすためには、行政と組合の知恵を持ち寄る必要がある。さらに、議会の理解と決断が欠かせない。地方議会の在り方については、本紙の社説や一般記事でもしばしば指摘されるが、議会と市民を結び付けるような記事も読んでみたい。
 各被災地で少しずつ復興が進んできている今、改めて誰のための何のための復興なのかを、被災地域に住む一人として覚悟しなければならない。本紙には、そのような覚悟を抱いているであろう被災地の多くの人たちの取り組みをつぶさに紹介しながら、一緒に歩み続けてほしいと思う。

<やべ・とおる氏>1968年、塩釜市生まれ。東北学院大経済学部卒。イトーヨーカドー(現S&IHD)勤務を経て、家業の矢部園茶舗(塩釜市)に入社。茶専門経営士「茶匠」の資格を持つ。2006年塩釜青年会議所(JC)理事長、08年、JC東北地区協議会長。市街地再開発事業の受け皿となる(株)まちづくり塩竈を設立。代表取締役を務める。