朝夕の冷え込みが木々の葉を赤く染め、2016年も年の瀬へと向かう。そんな風情を吹き飛ばすように、8日(現地時間)行われた米大統領選で、ドナルド・トランプ氏が次期大統領に決まった。本紙も10日の朝刊で大きく取り上げたが、それ以降「トランプ大統領によって環太平洋連携協定(TPP)はどうなる」という記事が中心なのが、少し気掛かりだ。

 21日朝刊の国際・総合面に載った記事「閣僚候補を集中『面談』」によると、トランプ氏は、選挙戦ではののしり合った相手を重要ポストに起用するための「面談」をしているという。エンターテインメントのようにさえ見えるあの選挙戦の後、米国は素早く自国のための体制を整え始めた。
 同じ面に、19日に開かれたTPP首脳会合の記事がある。見出しは「TPP消滅回避へ全力」だが、これが参加12カ国全てがそろう最後の会議になるのでは、と懸念されてもいる。だが、そもそもTPPはなぜ自国に必要なものなのかという本質論が必要なのではないか。トランプ次期大統領にどう対処するかが中心の紙面だと、それが見えてこない。
 21日朝刊国際・総合面には、アジア太平洋経済協力会議(APEC)と関連会議で、安倍晋三首相が「自由貿易は世界経済発展の源」と述べたという記事もある。中国の習近平国家主席は「開かれた経済がアジア太平洋地域の生命線」と語ったとのこと。立場が異なる両首脳が、技術力という日本の強みをさらに磨くことが重要だと、はからずも一致して指摘しているように思えた。
 この日の国際・総合面には、世界経済の中での日本の強みと役割が凝縮されていた。

 21日朝刊の社会面に「観光客激減 復旧遠く」の見出しで、鳥取県中部で震度6弱を観測した地震から1カ月後の状況が載っている。農林水産業関係の被害が13億円に膨らみ、被害がなかった観光スポットも訪れる人が激減。宿泊キャンセルが相次いでいるという。離れた地域の発災後の姿を伝えるのは大切である。
 そんなことを思っていたら、翌22日午前5時59分、福島県沖を震源地とする最大震度5弱の地震が発生した。東日本大震災を経験した方なら誰でも、津波警報・注意報に緊張しただろう。23日の本紙朝刊は、大きな写真も使い、各面で被害や避難の状況を伝えている。ただ、紙面構成上仕方ないのかもしれないが、5年8カ月前に大震災があって、今回の地震が発生したわけだから、各地域の具体的な状況、情報がもっと詳しく報道されてもよかったのではないか。
 32面のうち全面広告が5カ面を占めるというのは、前から決まっていたにしても、少し気になった。大震災を経験し、今回の地震では自分はどうすればいいか、何ができるかを紙面から読み取ろうとしている読者からすれば、どうだろう。震災を経験した本紙ならではの、より実用的な情報がまっすぐ伝わる環境づくりに期待する。