このところ、内外とも先行きに不安要素が多いためか、新聞に向き合うのがおっくうになりがちだ。ニュースが重いのである。そんな中で、本紙が年明けから力を入れている「トモノミクス」関連記事に自然と目が向いた。
 トモノミクスは造語。企業の社会的責任(CSR)を足掛かりに、東日本大震災が起きた2011年3月11日に返って経済社会を展望し、見えてくる明日を、そう名付けたようである。企業が金もうけを越え、さまざまな形で社会貢献することで、社会の課題を解決する様子が取り上げられている。

 1月31日朝刊の特集では、CSRの歩みが年表とともに紹介され、CSR活動が社会貢献をしてきた歴史がよく理解できる。
 東日本大震災だけでなく、大火被害に遭った新潟県糸魚川市での活動にも目が向けられている(2月5日朝刊1.3・社会面)。スキーリゾート白馬へ来る外国人観光客の糸魚川夕食ツアーが大火の後中断しそうになったが、被災した飲食店店主の声もあり、続いているという。ツアー発案者の旅行会社社長は「企業が復興に果たす役割の大きさ」を指摘している。
 また、酒蔵が焼けた「加賀の井酒造」は、富山県の酒造会社の設備を借りて酒造りを続けている。蔵元の兄を助けようと、弟は岩手県紫波町の「広田酒造店」で酒造りを学び始めた。見習い修業を受け入れた広田酒造店5代目蔵元の広田英俊さんは「東日本大震災後は同業者から多くのお見舞いがあった。今度は誰かの力になりたいと思った」と話す。
 東日本大震災後に、はやり言葉になった「絆」の実在を示すような記事だった。
 トモノミクス関連記事に登場する企業のCSR活動を見ると、企業の中にいる個人の、誰かの役に立ちたいという思い、そのために自分の能力を高めようとする気概を感じる。その気概を自分のものとしつつ、記者は記事を書いているようでもある。
 この社会で、自分に何ができるのか? 2月3日の社会・総合面には「日本の輸入 生物追い込む」の見出しで、日本の輸入が世界の792の絶滅危惧種に影響を及ぼしているという信州大の分析結果が載った。例えば、アフリカのエチオピアで生産され日本へ輸出されるコーヒーやゴマの農地開発のため、ヒョウやアフリカゾウの生息地が圧迫されている。
 何を買うか? 選択する時に、その生産現場周辺の人や動植物が生きる姿を想像し、考えて選ぶという行為でも、世界を変える力になることを知る。

 1月3日朝刊1面の連載「トモノミクス 被災地と企業」1回目には「友、共、伴-トモノミクスとは、被災地から考える資本主義の新しいかたち」とも書いてある。企業に属していなくても、友、共、伴はできそうである。一人一人の友、共、伴への思い。人に対してだけでなく、この地球に暮らす多様な生き物に対して友、共、伴と感じる広い視点が大事なのだと、一連の記事を読んで思った。