5日朝刊1面・社会面と6日朝刊社説で、水産業復興特区制度の適用を受けた桃浦かき生産者合同会社(石巻市)が他地区産のカキを流用した問題を扱った。東日本大震災からの復興には、心身の回復はもちろん、産業復興も不可欠である。桃浦の水産特区はモデルケースとして私の研究プロジェクトでも注目していただけに、事実解明と再発防止が求められる。
 本紙は地元紙らしく、合同会社、宮城県、漁協など多くの声を紹介した。消費者保護のため流用は是正すべきだが、同時に、特区で芽生えた復興への灯を消すことにならぬような報道を期待したい。

 7、8両日の朝刊スポーツ面では特集「仙台六大学野球 あす(きょう)開幕」が組まれた。高校やプロと比べて大学野球の注目度は低い。しかし、今春の仙台六大学野球は興味深い。東北福祉大にかつての絶対的強さはなく、仙台大や東北学院大からもプロ野球選手が誕生する時代である。連覇を目指す仙台大、王者復活を期す東北福祉大、立て直しを図る東北学院大。これら私学3強に加え、今年は東北大の戦力も充実している。監督が高校の同級生ということもあって注目している。宮教大や東北工大もプロ経験者を指導者に加え、全チームが可能性を秘める。
 そんなワクワクを感じさせる報道は本紙の専売特許である。本紙はブロック紙の強みを生かし、近年注目の北東北や南東北の大学野球報道も充実している。これからも、注目度の比較的低いスポーツにも脚光を当てていただきたい。
 2日朝刊「迫力レース 声援今季も」、9日朝刊「人馬さっそう、桜前線追い越す」(ともにワイド東北面)は、東北の競馬の季節到来を報じる。馬産地東北では昔から競馬が盛んである。本紙も河北新報杯などを通じ、競馬振興に寄与している。直木賞作家の故山口瞳は『草競馬流浪記』に戦後競馬復活の喜びを記している。政府の圧迫を受けずに公認賭博を堂々と楽しめる、自由で平和な社会の象徴として競馬を見たのだ。
 私も震災直後は競馬を再び楽しめるとは想像できなかったが、売り上げは好調に転じ、地方競馬も存続危機を脱しつつある。競馬が復興の象徴として、特に復興の緒にも就けない福島に力を与えられるよう、本紙も盛り上げてほしい。
 しかし、ギャンブルには弊害が必ず伴う。依存症問題は、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の喫緊の課題である。5日朝刊社会面「ギャンブル依存症患者 不要なリスク選ぶ傾向」は、機能的磁気共鳴画像装置を用いた京都大の実験を扱った。競馬やギャンブルの問題を教条的に、一面的に取り上げるのではなく、こうした科学的データを基に賛否両論を紹介し、読者の判断材料とすることが報道には求められる。本紙のこうした中立的報道姿勢を今後も続けていただきたい。

<はぎの・ひろお氏>1970年、東京都生まれ。早稲田大大学院政治学研究科博士後期課程修了。政治学博士。東北福祉大総合福祉学部助教授、総合マネジメント学部教授などを経て、2015年4月から総合福祉学部教授。専門は地方自治。