「新聞は社会の木鐸(ぼくたく)たれ」の言葉には、権力抑制のみならず、通常は注目されないものに意識的に日を当て、より良い社会へ導く意気込みも込められているだろう。本紙の最近の報道には、日の当たらない所に日を当てる社会的意義の高いものが多くあった。

 5月25日朝刊社会面の「災害公営住宅 孤独死43人」では、東日本大震災後に宮城県が把握していなかった災害公営住宅で孤立する被災者の困難を世に知らせた。筆者も研究プロジェクトで仙台市荒井東地区の災害公営住宅に関わっており、この問題の重要性を感じていた。阪神淡路大震災の経験は、復興が進みつつあるこの時期だからこそ、新たに発生してくる多くの課題を教える。震災を風化させないためにも、本紙にはこうした方々の抱える苦しさを引き続き丁寧に報じていただきたい。
 同じ日の社説「ギャンブル依存症対策」は、成長戦略の一つとして推進される予定のIR(統合型リゾート施設)で影となる部分に日を当てている。経済成長と同時に弊害も予測されるなら、十分な予防、対策は不可欠である。経済効果や弊害の実態、官民での各種対策など、読者の判断材料となる客観的報道の継続を希望する。
 5月28日朝刊1面「発達障害ケア強化へ」は、いじめなどを懸念した仙台市による小中学校での発達障害対策を報じた。アメリカ精神医学会の新診断基準DSM-5(精神障害の診断と統計の手引)で、旧来のアスペルガー症候群が自閉症スペクトラムに統合されたように、この領域は大きく変わりつつある。筆者の大学でも、現職教員向け各種研修の提供や児童・家族支援に積極的に取り組み、教育学部では特別支援教育に関する科目を必修化している。
 発達障害は近年大きな社会問題となっているが、外部からの判断が難しいことから社会の理解が進まず、その無理解に苦しむ方々も多い。本記事は発達障害の用語解説も交え、理解が不十分な分野に積極的に日を当ててその啓発につながる、意義ある報道だった。
 同日の社説「民生委員100年」では、地道に社会貢献する民生委員の方々に日を当てている。筆者は以前に救護法と競馬財源について研究したことがあり、方面委員(民生委員の前身)の当時のご尽力には頭が下がる。高齢社会、格差社会の中で地域包括ケアを進めていくには、民生委員の力が不可欠である。こうした目立たない「地上の星」に日を当てる、良い社説に思われた。

 最後は、写真に賛辞を贈りたい。6月2日朝刊スポーツ面の写真「拳を突き上げる東北楽天先発・則本」は、巨人戦で7試合連続2桁奪三振を達成した則本昂大投手の、天を仰ぐ姿が極めて印象的だった。甲子園にも出場できず、現在は閉学した大学に一般入試で入学してまで野球を続けた則本投手の日本プロ野球新記録を祝うのにふさわしい、素晴らしい写真だった。幸運にも球場で同じ瞬間を共有した筆者も、これを見て感動がよみがえった。