しとしとと続く雨。傘が手放せない涼しいお盆が過ぎた。仙台市では7月22日から記録的な連続降雨となった。この日照不足と低温がどう影響を及ぼすのか。日がたつごとに不安が募り、報道が待ち遠しかった。
 それに応えた最初の記事は8月15日朝刊1面の「東北の太平洋側 夏はどこへ/やませ流れ込み農作物影響心配」。続いて19日朝刊1面「農作物影響に東北警戒」で、太平洋側4県の農作物の状況と各県の対応策を紹介した。
 夏の盛りのレジャーシーズンだけに、商業へ及ぼした影響も大きかった。20日社会面「東北・8月の商戦、観光施設/寒~い夏明暗」では、家電の売れ行きから百貨店の入客数まで包括的な分析がなされた。今後明らかになる余波についても、順次伝えてほしい。

 今月は地域振興のヒントとなる記事が相次いだ。一つは10日から14日まで朝刊1.3面で5回連載された「鳴子温泉物語 再生への岐路」だ。
 東北有数の歴史ある名湯、大崎市の鳴子温泉郷が、いま分岐点に立たされている。宿泊客は減り続け、旅館などの宿泊施設はピーク時の半数に。その一因を「(2)衰退」では「放漫経営」「人任せな体質」という歯に衣(きぬ)着せない表現で鋭く突いた。しかし本連載は決して悲観一辺倒ではない。むしろ鳴子温泉の潜在能力に大きな信頼を寄せた、前向きな視点で展開されていた。
 里山・湯治文化の見直し、体験型レジャーの充実など、さまざまな取り組みも紹介された。それらの挑戦はまだ小さな「芽」かもしれないが、いずれ大樹になる可能性を秘めている。「(5)完 インタビュー」での久保田美穂子亜細亜大准教授の指摘「再生とはバブル期に戻すことではない。新しい話題が一定の間隔で出てくるのが元気な証拠」は、東北の他の観光地へも届くエールであろう。

 14日から21日まで朝刊1.3面で7回掲載された「米国流直売経済 CSA先進国の今」も、22日の写真特集「食を通じ人つながる」と併せて読み応えある連載だった。アメリカで生まれたCSA(地域支援型農業)、生産者と消費者が直接つながる販売方式は、双方に多くのメリットをもたらす。中でも、地産地消による地域経済への貢献、顔の見えるつながりの継続という点が魅力的だ。記者は「東日本大震災後、販路の回復に苦しむ被災地に応用できないか」という視点で取材に臨んでいる。
 CSA普及のためには、小規模生産者を支える重要性について消費者側が理解することが不可欠だという。その第一歩として本記事が果たした役割は十分に有効であったと感じる。ただ、当然存在するであろうCSAのリスク面についてはいまだ見えにくい。今後活発な議論の広がりを期待したい。東北で試みの芽が現れたなら、ぜひ継続して追ってほしいと思う。
 新しい種をまく勇気と、弱々しい芽を温かく育む土壌。未来へと吹く風が本紙から広がっていくことを感じられた2連載だった。