本紙には、特集の形は取らないが、数日にわたって複数の記事で一つのテーマを重層的に扱う、読み応えのある報道が見られる。
 台風10号豪雨から1年たった8月最終週には、27日朝刊の社説「治山こそが治水の基本だ」を皮切りに、教訓を生かす良質な記事が並んだ。28日社説「災害とSNS情報」は、若者のマストアイテムSNSに関し、災害時利用で肝に銘じるべきことを伝えた。27、28日朝刊の連載「再考 自助・共助 台風10号豪雨から1年」では、公助の限界を指摘するにとどまらず、公助に頼るだけではない共助の芽生えに日を当てた。30日朝刊3面「避難指針は半数以下」では、東北の高齢者施設での自助努力不足に冷静に警鐘を鳴らし、31日朝刊社会面「慰霊 遺族の姿なく」は、施設で亡くなった高齢者の遺族の、今も消えない悲しみと施設への不信感も報じている。
 これら一連の報道は、毎日隅々まで読むことで立体的に事象が見えてくるという新聞の楽しさに気付かせてくれた。

 筆者は大学で地域振興も講義しているが、今注目されるものの一つに「萌(も)えおこし」や「聖地巡礼」と呼ばれるアニメや漫画を活用した観光振興がある。宮城では、伊達政宗や片倉小十郎に脚光を当てて、歴史やゲーム好きの若い女性を誘致したケースが話題にされる。31日から夕刊に7回連載された「ジョジョランド 仙台・奇妙な巡礼マップ」は、仙台出身の漫画家荒木飛呂彦の代表作『ジョジョの奇妙な冒険』の「聖地」仙台の魅力を多面的に伝えた。
 この連載を前に、27日朝刊社会面「アニメ聖地88カ所選定」で「君の名は。」や「サマーウォーズ」でのアニメツーリズムを報じ、さらに同日読書欄「東北の本棚」でも『ジョジョ論』を紹介する周到な仕掛けになっていた。これも、ディープに新聞を読む楽しみに気付かせてくれる趣向だった。
 アニメツーリズムの成功例とされる茨城県大洗町を見ると、その成功には地元住民の本気度、なりきり度が重要であることが分かる。仙台が「聖地」として成功するには、市民を巻き込む必要があり、新聞はそこで大きな影響力を持つ。本紙には、これからも新聞ならではの力で東北各地を盛り上げてもらいたい。

 私的に感謝したいのは27、28日の朝刊社会面連載「『最後の海軍大将』井上成美の戦後」である。日独伊三国軍事同盟に反対した海軍開明派の井上成美は戦後、神奈川県横須賀市で清貧生活を送った。この連載は、英語塾、ゆかりのオルガンを柱に、井上の戦後の人生を報じる。
 井上は、筆者が在校中何度も名前を聞かされた高校の大先輩であり、高校時代の思い出がよみがえった。宮野澄『最後の海軍大将』を知らない世代に地元の偉人の足跡を教える、良い連載だった。
 筆者の担当は今回で最後となる。本紙には東北唯一のブロック紙として、今後とも「白河以北一山百文」の精神を肝に、東北の誇りを伝え続けてほしい。