天皇陛下の退位を巡る各党派の見解が出そろった。衆参両院の正副議長による聴取に個別に報告した。ほぼ与野党間で陛下一代限りの特別法と、皇室典範改正による恒久制度化に二分された。
 事は将来の皇位継承まで影響を及ぼす重大なテーマ。しかも、憲法との整合性が絡んでくる。結論にいささかの曇りがあってはならない。
 与野党激突という構図は避けるにしても、着地を急ぐあまり、水面下での事前調整といった不透明な手法は避けるのは当然のことである。
 天皇の地位は憲法で、「主権の存する日本国民の総意に基く」(1条)と規定されている。国民の目に見えるように公式の場で、真摯(しんし)に議論を深めていくことが肝要だ。
 各党派とも、83歳になられた天皇陛下の退位に対応することでは一致している。異なるのはその立法形式だ。
 自民、公明両党と日本維新の会、日本のこころは一代限りの特別法を、民進、共産、自由、社民の野党4党などは、皇室典範改正を経て退位を制度化するよう求めた。
 自民党は退位の恒久制度化について、天皇の意思や年齢、職務遂行能力といった適切な要件の設定は極めて困難だとして否定的な立場だ。
 年齢は一律に決めにくく、職務遂行能力は能力主義を排す世襲制との整合性に課題がある。何よりも天皇の意思を要件とすれば、国政への関与を禁じた憲法4条に抵触する恐れがある、としている。
 一方、民進党は論点整理で、特別法について憲法2条を踏まえて違憲の疑いが生じかねないと指摘した。皇位は「国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」と明記しているからだ。
 さらに「時の政権による恣意(しい)的運用の危険性を排除できない」と主張。天皇の意思に基づく退位などを前提に、皇室会議の議決を経るよう皇室典範の改正を求めている。
 双方の隔たりは簡単に埋まりそうもない。そこで、与党には典範付則に特別法の根拠規定を置くことで接点を探る動きもあるが、問題先送りの弥縫(びほう)策と言わざるを得ない。
 これからも、天皇の高齢化は避けて通れない課題だ。その都度、例外扱いの特別法で対処するというのでは安易すぎる。例外が先例となるのにも違和感がある。やはり、恒久制度化が本筋ではないか。
 自民党は恒久制度の難点ばかり強調するが、実際にどれだけ掘り下げたのか、甚だ疑問だ。個々の議員の意見は書面で募るなど、「初めに特別法ありき」とも受け取れる姿勢で、開かれた議論があったとはとても言えない。
 安倍政権では、安定的な皇位継承の問題も手つかずのままだ。首相は退位と切り離して検討する意向を表明しているが、女性宮家の創設などを含め同時並行の形で議論を進め、新憲法にふさわしい皇室典範を模索していくべきだ。