事もあろうに暴力団組長に医師が不当に便宜を図っていたら、弁解のしようもない。住民の税金が投入された公立大学の付属病院であればなおさら責任は重い。
 京都府立医大病院で虚偽の診断書が作成された疑いが強まり、京都府警が虚偽公文書作成などの容疑で、病院や病院長宅を家宅捜索する事態になった。
 詳しい事実関係はまだ不明な点があるが、「刑務所への収監には耐えられない」との虚偽回答書を検察に提出した疑いが持たれている。
 収監時期を引き延ばそうと何らかの「手心」を加えていたとしたら、病院への信頼を根こそぎにする悪質な行為であり、刑事責任を追及されるのも当然になる。
 収監を巡って診断書が必要になったのは指定暴力団山口組系の組長。恐喝などの罪に問われ、京都地裁は2013年6月、懲役8年の判決を言い渡した。15年7月には最高裁が上告を棄却し、懲役刑が確定している。
 通常なら確定の時点で刑務所に収容されるはずだが、組長は前年の14年7月に府立医大病院で腎臓の移植手術を受けていた。収監が可能かどうか、医学的な判断を求められた病院側は「現状は拘禁(収監)に耐えられない」などと文書で回答したという。
 その判断が「虚偽」だというのが府警の見立て。検察は刑の執行を停止して今月14日にようやく刑務所に収容したのだから、もし偽ったとしたら違法な収監逃れを図った疑いが濃厚になる。
 組長の担当医と共に診断書作成に関わった病院長は「公正に作成した」と潔白を訴えている。また、担当医は以前の府警の聴取に「病院長の指示で虚偽の書類を書いた」と話したが、その後は指示の存在を否定しているという。
 立件に向けては診断が医学的に妥当だったのかどうかが最大のポイント。検査データなどを別の医師らに精査してもらい、医大の診断と突き合わせる必要がある。
 担当医に対する指示の有無や暴力団関係者とのつながりについても、徹底して捜査しなければならない。
 気掛かりなのは、医大の学長が組長と何度か飲食を共にしていたということ。学長と組長を引き合わせたのは、暴力団捜査に関わった経験がある府警OBだという。
 医大のトップが付き合っていたとしたら、それだけで批判は免れないだろう。暴力団は反社会勢力の最たるもの。相手を組長と知ってもなお付き合い続けていたとしたら、守るべき一線を完全に越えていたことになる。
 不可解な交際と今回の事件が結び付くのかどうかは分からないが、何度も会食するような関係は異常としか思えない。その経緯について府警は捜査を尽くさなければならないし、医大側も自ら調べて明らかにする責任がある。