政府の働き方改革実現会議で、過労死につながる長時間労働の是正に向け、残業時間の規制強化を巡る議論が進んでいるときだけに、一企業のこととはいえ、無関心ではいられない。
 いや、むしろ、企業に利便性の向上を当然のように求める消費者意識を含め、長時間労働を助長しかねないこの社会のありように対する問題提起でもある、と受け止める必要があるのではないか。
 宅配便国内最大手・ヤマト運輸の労働組合が今春闘の労使交渉で、働き方改革の一環として宅配個数をこれ以上増やさないよう求めたことだ。
 その理由として挙げたのがインターネット通販の普及で取扱量が急増する中、深刻な人手不足から、ドライバーらの長時間労働が常態化していることである。
 「もう限界」との悲鳴だ。会社側も要望を重く受け止め協議に応ずる方向という。
 長時間労働の背景には、構造的な人手不足に加え、即日配達をはじめ、ネット通販の急速な拡大に伴い激化するサービス合戦がある。特に、再配達や夜間に時間帯を指定して届けるサービスは、ドライバーの負担が重いという。
 そのエスカレートぶりは、利潤を追求するネット通販業者ら荷主、宅配業者による競争の表れだとしても、「消費者のため」でもあり、現に消費者はその便利さを当たり前のように享受している。
 だが、その結果としてドライバーが無理を重ね、長時間労働から抜け出せないのだとしたら「ひとごと」では済ませられまい。そこまでのサービスが本当に必要なのかどうか、われわれ消費者も再考を促されているといえよう。
 過労死等防止対策白書に、こんなデータがある。業種を問わず企業になぜ残業が発生するか、原因を尋ねたところ「人員が不足しているため」「業務量が多いため」以上に多かったのが、「顧客(消費者)からの不規則な要望に対応する必要があるため」だ。
 企業ごとに顧客対応能力の違いはあるにしても、強引で過度の要望や注文が長時間労働を生む第一の原因と企業が考えていることを、消費者は認識しておく必要がある。
 加えて中小の下請け企業では、急な仕様変更や短納期の発注といった取引慣行も残業の背景にあるとされ、業界に関わる課題も指摘される。
 働き方改革実現会議では、過労死・過労自殺を二度と起こさないという強いメッセージを含む残業上限の法規制が打ち出されることを望む。
 この議論と並行し今後も、子育てや介護などと両立できる働き方の実現に向け、労使が主体的に取り組む必要があることは言うまでもない。
 と同時に、働く人たちの命と健康を守るため、一企業にとどまらず業界も、そして広く消費者も、社会全体が意識を改めていくことが求められているのではないか。