ひとたび災害が起きれば、地域にとって道路や鉄路は生命線になる。被災者を救い、物資を運び、情報を伝え、命をつなぐ。東日本大震災後のインフラ整備に不可欠な視点になったと言える。
 岩手県の沿岸被災地では交通網の整備が急速に進む。国が復興道路と位置付ける三陸沿岸道路(仙台-八戸、359キロ)は昨年秋までに46%が開通。2018年度中には60%を超え、20年度中にも完了する見通しだ。
 震災前の事業化決定は約6割の211キロ。ルート未定の区間さえあった。そこに震災が起き、一部開通区間が救急搬送や物資輸送、あるいはボランティアの交通路として代替機能を果たした。
 国土交通省は「災害時の道路には、破壊されず人が移動できることが求められる」と教訓を示す。かつてないスピードで「命の道」を整備する国の姿勢は評価したい。
 ただ、生活に密着する地域の道路網はまだ脆弱(ぜいじゃく)だ。沿岸を直撃した昨年8月の台風10号豪雨では県管理の国道、県道が最大47路線78区間で通行止めとなった。震災時の68区間を上回り、内陸からの物資輸送や復旧支援が滞った。川の氾濫で護岸ごと道路がえぐり取られる被害が相次いだ。
 三陸沿岸道路や宮古盛岡横断道路(100キロ)、東北横断道釜石秋田線(80キロ)の動脈が無傷でも、毛細血管のような周辺道路が寸断されれば地域の足は機能しない。県は沿岸と内陸を結ぶ国道や県道計33路線で道幅拡大やトンネル整備を進めている。さまざまな災害に耐え得る道路網の構築を急いでほしい。
 鉄道に目を転じると、震災で被災したJR山田線(宮古-釜石間)が18年度中に全線復旧する。第三セクター三陸鉄道(宮古市)に移管され南北リアス線と直結する。
 地域の期待は膨らむが、三鉄の経営を巡る課題は多い。震災直後の観光需要が一段落した反動があり、16年度決算見通しは当期損失が3182万円で3年ぶりの赤字となった。4~10月期の輸送人員は約32万8000人で前年度比7万2000人も減った。
 山田線復旧後のレールは久慈市から大船渡市までの約163キロで、駅は計38に上る。長期にわたる運休でマイカー依存が強まっていることが想定され、利用促進のための駅前開発が不可欠となる。
 宮古市は2月、移管後の山田線を含めた沿線3地区に新駅を設ける方針を決めた。いずれの地区も災害公営住宅の整備や住宅再建で人口が増えており、商業施設が集積する可能性もある。他の沿線自治体でも駅周辺を核としたにぎわい創出が望まれる。
 岩手は交通ネットワークの転換期を迎えつつある。新たな産業を創出し、雇用の場を被災者に提供する好機にもなろう。国と県、地域企業が連携し、復興事業完了後の被災地の姿を描いてほしい。