最先端技術の開発拠点として位置付けられる東北初の次世代型放射光施設計画が、建設地の選定など実現に向けて本格的に動きだした。
 放射光施設はいわば「巨大な顕微鏡」。電子を光速に近い速度に加速させ、磁場の力で方向を曲げた際に発生する放射光を活用し、ナノレベルで物質の構造を解析する。
 新素材、燃料電池、電子部品、創薬などの幅広い分野で世界をリードしていくためには不可欠の基盤施設だ。周辺には研究者はもちろん、成果を製品化する工場などの集積も期待できる。施設を中核にした全国の産学官ネットワークも見込まれよう。
 東北がモノづくりの先進地に生まれ変わる可能性を秘めた「イノベーション創出ツール」と言っていい。オール東北でバックアップする態勢づくりを急ぐべきだ。
 候補地として挙げられているのは宮城県丸森、松島、大郷各町と東北大青葉山キャンパス(仙台市青葉区)、青森県むつ小川原開発地区(六ケ所村、三沢市)の5地点。
 建設推進主体の産学連携組織、財団法人「光科学イノベーションセンター」が設けた諮問委員会が4月中に選定し、2018年度内の着工、20年度の完成を描いている。
 立地場所は地盤の安定性や地形だけでなく、研究機関・企業との連携の可能性、交通アクセスなどの利便性も重視すべきだ。いずれにしても、運用面も含め利用しやすい施設を目指す必要がある。
 国内の放射光施設は世界有数の「スプリング8」(兵庫県佐用町)をはじめ、9カ所ある。ただ、いずれも炭素など「軽元素」の解析に適する、エネルギーが低い「軟エックス線」領域の輝度が低いのが難点だった。
 その点、東北の計画では軟エックス線の輝度が向上されており、産業界にとっての有用性は極めて高い。使い勝手を考えて利用時間、利用料、データ解析の点で新たな仕組みを導入するのも特徴だ。
 建設費はスプリング8の4分の1程度の約300億円。一部を民間で賄うとともに国に予算措置を要望している。
 国内企業三十数社が既に1口5000万円の出資に応じている。さらに地場の中小企業も共同利用ができるように小口出資も募っているが、現在の厳しい経済状況下では、そう簡単ではなかろう。
 東北ではまだまだ放射光施設自体への理解が乏しい上、機運の盛り上がりに欠けているのは確かだ。旗振り役の東北経済連合会などがPR活動にさらに力を入れ、メリットを浸透させていくことが、結果的に資金獲得につながっていくのではないか。
 とにかくスピードが大事である。国内企業が海外の高性能放射光施設に出向き、研究開発をするのが当たり前になってからでは遅い。国も地域創生、震災復興の観点からも全面支援していくべきだ。