米大統領選で、トランプ陣営とロシア政府が「結託」し選挙干渉したのかどうか。そのことを調べていた連邦捜査局(FBI)に対し、大統領の司法妨害はあったのかどうか。連鎖するこれら重大疑惑の追及が、本格化する。
 司法省は、捜査を統括する特別検察官を置くことを決め元FBI長官のモラー氏を任命した。議会では独立調査委員会の設置を含め、真相を究明しようとの動きが広がる。
 ロシアによる選挙介入疑惑は米国の主権に関わる問題であり、司法妨害は大統領の弾劾手続きに入る要件になり得る重罪だ。公正な捜査を望む国民の声は高まっている。
 同時に、米政権・政界の混乱が長引けば、世界経済だけでなく国際社会にもさまざまな影響が及びかねない。
 世論に応え、対外的影響を最小限に抑えるためにも、全容解明を急いでもらいたい。
 トランプ大統領とその周辺を巡る疑惑を並べれば、次のようになろうか。
 そもそもの疑惑は、大統領選挙のさなかにあった。
 民主党候補クリントン氏陣営がサイバー攻撃され、大量のメールが流出。情報当局は米ロの関係修復に積極的なトランプ氏勝利を狙って、ロシアが攻撃を仕掛けたと断定した。トランプ陣営とロシアが結託し選挙に干渉したのではないか、との疑いである。
 その疑惑に絡み捜査の対象とされたのが、辞任したフリン前大統領補佐官だ。
 このフリン氏に対する捜査を中止するよう、トランプ氏は今年2月に大統領執務室でFBIのコミー長官(当時)に求めたとされる。自分が捜査対象になっていないかを長官に尋ねたことと併せ、司法妨害が疑われる。
 疑惑はもう一つある。9日にあった突然のコミー長官解任劇だ。コミー氏は数日前にロシア疑惑の捜査を加速させるため態勢の強化を求めた。その結果次第では政権が大きな打撃を受けかねない。だから司法妨害を狙った解任ではないかとの疑いである。
 特別検察官は、政権の影響を受けずに独立した捜査を行える。捜査権限は「捜査で浮上した、もしくはこれから浮上するあらゆる事象」に及ぶ。ロシア疑惑にとどまらず、大統領による司法妨害疑惑も捜査対象となり得るのだ。
 結果によっては、大統領弾劾が現実味を帯びかねない。今回の一連の疑惑が、ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件になぞらえ「ロシアゲート」と呼ばれるゆえんでもある。
 トランプ氏はロシアのラブロフ外相に、同盟国から提供された「イスラム国」(IS)に関する機密情報を漏らしたとも伝えられる。
 このことを含め一連の疑惑について、トランプ政権は全否定している。であれば「無実」を証明するためにも特別検察官の捜査、議会の調査には全面的に協力するべきだ。