天皇陛下の退位を実現する特例法案が閣議決定され、衆院に提出された。
 83歳という天皇陛下のご年齢に配慮するあまり、その場しのぎ、急ごしらえの法整備であることは否めない。
 超高齢化社会が進む中、天皇の退位は避けては通れないテーマで、恒久制度化を検討していく必要がある。皇室典範は時代に合わなくなった部分もある。安定的な皇位継承を考えれば、先細りにある皇族の問題を含めて制度設計の議論を加速していくべきだ。
 法案には特例法が皇室典範と「一体」と位置付ける条文が置かれたが、あくまで例外扱いであることには変わりない。将来、退位の問題が再び浮上した場合、どう対処していくのか、不明瞭なままだ。政府は明確にしてほしい。
 「特例が先例となり得る」という見解があるものの、結局はその時々の政権や国会の判断に委ねられることになるだろう。それこそ恣意(しい)的な退位につながる恐れはないのか、最後まで疑念が拭えない。
 憲法2条に「皇位の継承は皇室典範の定めるところ」と明記されている通り、典範の本則に退位を明文化するのが筋で、国民も支持する。
 共同通信による4月時点の世論調査でも、「皇室典範改正で今後の天皇も退位可能とすべきだ」と答えた人は68%にも上っている。「特例法で一代限りに限って認めるべきだ」は25%にとどまる。
 しかし、安倍政権は支持基盤の保守派に配慮したのか、一代限りに固執した。与野党で合意した国会の見解さえ修正しようとして対立を招き、元に戻した経緯がある。
 当初、法案名について一般用語である「天皇」ではなく「天皇陛下」を使って、あくまで例外的措置であることを強調しようとした。
 「退位に至る事情」にもこだわった。公的活動が高齢のために困難になることを案ずる天皇陛下の「お気持ち」という表現について、政治的関与を禁じた憲法に抵触する懸念があるとの理由で、「ご心労」に差し替えようとした。
 ただ、生身の人間天皇として、やむにやまれず吐露した言葉を否定できるだろうか。そこまで思い詰めた状況に置いたのは、政治の怠慢であることを忘れてはなるまい。
 特例法が成立して、これで一件落着というわけにはいかない。皇室を巡る喫緊の課題は安倍政権の下では手つかずのままにある。
 秋篠宮家の長女眞子さまが結婚すると、皇籍を離れて一般市民となる。未婚の女性皇族は眞子さま含め7人で、大半が20~30代。今後も結婚による皇室離脱が続くだろう。
 ならば、結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」を作り、活動を支えていくしか安定の道はないのではないか。その旨を特例法採決時の付帯決議に盛り込むべきである。国民の関心が高まった今こそ、典範改正に取り組むときだ。