政策遂行の一端を担う政府系金融機関による悪質な不正である。その全容と背景、経営責任について、徹底的に解明しなければならない。
 商工中金で発覚した全国規模の不正融資を巡って、金融庁、経済産業省、財務省が立ち入り検査に乗り出した。
 商工中金が設けた第三者委員会の調査で、不正は全国35支店に及び職員99人が関わっていたことが判明した。だが調査の範囲は、不正が横行した「危機対応融資」案件の1割強にすぎない。検査の進展次第では不正の拡大、新たな不正も発覚しかねない。厳しい姿勢で臨みたい。
 問題の危機対応融資は、世界経済の混乱や大震災といった外的要因で、資金繰りが危機的状況に陥った中小企業を救済する。民間金融機関が回収難を恐れ融資に二の足を踏むといったケースが対象だ。
 だが実際には経営が悪化していない企業について、書類を商工中金職員が改ざんするなどして、悪化しているように見せかけて融資を実行していた。こうした犯罪的行為にとどまらず、一部の支店ではその隠蔽(いんぺい)を図っていたというのだから、悪質極まりない。
 なぜ不正が広がったのか。第三者委が背景として指摘したのは組織ぐるみの融資実績づくりである。「平時」では危機対応融資は減り、そのことは業務の縮小につながる。その事態を避けるには、実績を維持しなければならない。
 実際の資金需要を無視した事業計画が支店に割り振られ、そのノルマ化が「現場への過度のプレッシャーとなり、不正行為が全国的に広がる要因になった」との見方だ。
 中小企業を守るための公共性の高い事業を、業績維持、ひいては組織存続のために利用したのだとしたら、政府系金融機関としての存在意義を自ら否定したに等しい。国民に対する背信行為だ。
 しかも、不正融資を受けた企業は経営が悪くなかったのだから、民間から融資を受けられたことを考えれば、民業圧迫でもある。政府系金融機関として、あるまじき行為というほかはない。
 なぜ、今回のような問題が生じたのか。組織の体質、風土を根本から見直す必要がある。不正行為を巡る経営陣の責任はむろんのこと、経営体制や組織統治の在り方について、立ち入り検査で深くメスを入れなければならない。
 商工中金の経営環境を取り巻く問題もある。トップに歴代OBを送り出してきた経産省にとっては重要な「天下り先」である一方、一度は民営化のレールが敷かれながら、大震災などもあって方針が見直され、今は「半官半民」の経営体制となっている。
 政策遂行と営利追求が半々という曖昧な業務運営を強いられ、官庁とのなれ合い体質も温存する。そうした企業風土が不正拡大の温床になったとの指摘もある。この機会にうみを出し切りたい。