このグループの結束に、これほどまでの亀裂が入ったことがあるのだろうか。世界経済の今後と国際秩序の形成に大きな影響を及ぼすだけに、憂慮せざるを得ない。
 イタリアで開かれていた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)のことである。
 米英仏伊4カ国の首脳が初参加だった。その中で、協調を揺るがしたのはトランプ大統領である。この場でも「米国第一」の我を通した。
 その結果、欧州各国首脳と対立。双方の「橋渡し役」として安倍晋三首相は存在感を高めようとしたものの、奏功しなかったようだ。
 採択された首脳宣言で、テロ対策について、さらには北朝鮮の圧力強化を巡っては結束することで一致した。
 英マンチェスターで起きた自爆テロを受け、元凶である過激派組織「イスラム国」(IS)の最終的な壊滅に向けた努力の継続をうたった。
 北朝鮮情勢については「新たな段階の脅威」だとの認識を共有し、核・ミサイル開発の完全放棄を求めた。
 対立が浮き彫りとなったのは、地球温暖化対策である。新しい枠組み「パリ協定」について、自国の雇用確保や競争力強化のためとして離脱を視野に入れるトランプ氏に対し、メルケル独首相ら欧州首脳は残留を働き掛けた。
 だが歩み寄りはなかった。首脳宣言は「米国は方針見直しの過程にあり、合意に参加する立場にない」と、米を除外扱いにする異例の表現。事実上の決裂といえる。
 米政権は近くパリ協定を巡り最終決断をするという。残留するよう強く求めたい。
 温暖化対策に比べれば穏当な表現だとしてもG7の協調に、より深刻な影を落としたのは自由貿易を巡る議論だ。
 「現在の反保護主義の議論は不公正な貿易を前提にしており、賛成できない」とし、保護主義的な政策も辞さないのがトランプ政権。日欧は反保護主義の明記を主張した。
 宣言は「あらゆる不公正な貿易慣行に立ち向かう一方、自由な市場を維持し、保護主義と闘う」と、いわば両論併記の形で落ち着いた。
 だが、深刻に受け止めねばならないのは、その原点、その精神とも言える自由貿易体制の堅持を巡り、G7が初めて大揺れしたことだ。
 自国の産業を保護するために貿易を制限すれば、世界経済の繁栄はない。国際協調や市場経済に根ざす、そうした「共通の価値観」に基づきG7は行動し、国際社会から一目置かれてきた。
 だが、その結束を維持できるのかどうか、岐路に立たされつつあるのは確かだ。
 トランプ政権の今後を注視しつつ、「共通の価値観」を普遍的価値とし、それに基づき引き続き行動できるのかどうか。G7としての協調を取り戻すためにも、日本と欧州各国に、そのことが突き付けられているのではないか。