今国会で公選法を改正し、2019年の次回統一地方選から、都道府県議選と市議選でマニフェスト(選挙運動用ビラ)の配布が認められる見通しになった。与野党が大筋で合意した。
 政策型選挙の実現に一歩前進ではあるが、町村議選だけが除外されてしまったのは何とも残念だ。
 岩手県岩泉町で4月にあった町議選では、自粛ムードが各陣営を覆った。
 昨年8月の台風10号豪雨の痛手から立ち直れない町民に配慮したというのが、その理由だ。多くの犠牲者が出た反省を踏まえ、地域防災の在り方を論じる好機と分かっていながら、立候補者も有権者もみすみす黙した。
 候補者名を連呼するのが選挙戦と信じて疑わないから、こうした光景が繰り返される。仮にマニフェストの配布が可能ならどうだったか。町の防災施策を町民一人一人が考える一助になったはずだ。
 そもそも政策本位の選挙を実現しようというわが国のマニフェスト運動は、国政に先んじて地方で始まったことをいま一度思い起こしたい。
 03年岩手県知事選の増田寛也氏が先駆けになり、07年統一地方選から首長選挙で配布が認められた。地方議員選挙の解禁は、政策型選挙の総仕上げと言えよう。
 これまでに岩手県、宮城県、酒田市など全国30の議会が、全面的な配布解禁を求めて意見書を可決している。与野党には会期末ぎりぎりまで、地方議会・議員の真意をくみ取る努力を求めたい。
 地方議員がマニフェスト解禁を求める背景には、地域課題が山積する中、政策本位の選挙を展開したいと願っても、それがかなわないという公選法の縛りがある。
 本来、選挙中の連呼行為を禁じているのが公選法だ。しかし、選挙カーの走行中は例外的に連呼が許されており、政策の訴えは停車中のみ認める、という理解不能な規定が放置されてきた。
 与野党は「各議会が条例で定めた場合」という条件付きでビラ作成費用の公費負担を認めるという。この条件付けも不可解だ。
 合意案の基になった民進党案に沿ってマニフェスト配布に掛かる公費負担を試算した場合、前回仙台市議選(候補者66人)で計500万円強、先の岩泉町議選(候補者15人)なら計二十数万円で済む。
 地域社会の民主主義を支えるコストと考えれば、全額を公費負担としても決して高くはないはずだ。
 議員選挙でも注目度の高い東京都議選(23日告示、7月2日投開票)は、残念ながら政策論争を脇に置いた劇場型選挙の気配が濃厚だ。
 首長や政党が議員選挙を首長や政党による政争の具にしては、二元代表制の本旨にもとる。有権者本位の選挙を実現するため、議員マニフェストの全面解禁を実現したい。