米国のトランプ大統領が、地球温暖化対策のための国際的枠組み「パリ協定」から離脱すると表明した。
 中国に次ぐ世界第2位の温室効果ガス排出国の決断である。今世紀後半に「脱炭素社会」の実現を目指した協定の実効性が、大きく損なわれかねない事態といえる。
 「遺憾」「失望」との表現で、各国から批判が相次いだのは当然のことだ。
 温室効果ガスの排出を早急かつ大幅に減らさなければ、将来、厳しい干ばつや海面上昇が避けられず特に島国や貧しい国で被害が深刻になる。
 そのことは多くの研究者の共通認識であり、温室効果ガス削減の取り組みが「待ったなしだ」として、190カ国以上が結集し結実させたのがパリ協定にほかならない。従って、その取り組みの停滞、後退は許されない。
 途上国も参加する対策の枠組みからの大国の離脱は、無責任のそしりを免れまい。その決断は容認し難い。
 ただ、それで国際協調に揺らぎが生じたのだとしたら、締め直さねばなるまい。
 リード役を果たすべきは日本と欧州連合(EU)の核である独仏伊の先進国である。パリ協定が定める温室効果ガス削減目標の履行に向け、着実に取り組むことである。
 そのことをテコに大排出国である中国、インド、ロシアを含む新興国とも連携し、取り組みを強化していきたい。
 一方で、協定の規定上、離脱までには3年半を要するとされる。時間はある。米国に対しては、協定に残留するよう説得を続けたい。
 離脱は大統領選の公約とはいえ、このタイミングでの決断はロシア疑惑で支持率が低迷する中、一部支持者にアピールするためとの見方がある。もっとも、「米国第一」を優先したのだとしても、その決定には疑問が残る。
 トランプ氏は、パリ協定によって支持基盤の一つである石炭産業の雇用喪失につながることを懸念してきた。だが実際には石炭業界は安い天然ガスに押されて、既に競争力を失っているのが現状だ。
 製造業の復活、経済成長を言うなら、トランプ氏はむしろ「脱炭素化」の取り組みに目を向けるべきではないか。再生可能エネルギーであり、電気自動車である。そうした市場の拡大が米国の産業競争力を高めよう。
 そうした観点からも、トランプ氏には再考を求めたい。
 政権の思惑・政策とは逆に、米国内では、独自にパリ協定に沿った排出削減や再生可能エネ導入の目標を掲げる企業、地方自治体が増えているという。
 この地球を守るため、温暖化防止の取り組みを決して後退させてはならない。トランプ政権の決断を逆手に取る形で、各国政府はもちろん自治体も企業も、そして、われわれ一人一人が、そのことを再確認し、心に刻みたい。