大災害が起きて現場に近い自治体がさまざま対応しようと思っても、権限がないために素早く実行に移せない。
 災害対応の流れや仕組みを定める災害法制には、そのような歯がゆい課題があるとして、仙台市をはじめ全国20の政令指定都市で組織する指定都市市長会が国などに早期見直しの要望を続けている。
 分権論議も背景にした行政権限を巡る「綱引き」の一つと受け流す向きもあるが、災害対応は住民の命、安全安心に直結することだけに同じ次元で扱ってはなるまい。
 阪神大震災、東日本大震災に続いて熊本地震が昨年発生し、政令市が被災地となる大災害が全国で相次ぐ中、見直し要望は緊急かつ切実なものになっているという。
 南海トラフ巨大地震などへの警戒も踏まえれば放置は許されない。政令市が指摘する法制度の問題点を市民レベルでもきちんと共有し、犠牲や混乱を回避するために必要な改善を考える必要がある。
 被災者の救出、避難所や物資の提供、応急仮設住宅の建設など発災直後の対応全般を規定する災害救助法は、それら「救助」の主体を都道府県と定めている。基礎自治体の市町村は法律上は補助役という位置付けであり、政令市もその枠内に置かれている。
 実際には事務委任で代行するケースもあるが、委任による権限は曖昧になるため、素早い決断と柔軟な対応が求められる場面では躊躇(ちゅうちょ)や混乱につながりかねない。東日本大震災では、委任が絡んだことで仙台市の応急仮設建設が可能な時期に着手できず、遅れる事態になったという。
 一般論として被災者と直接向き合う基礎自治体に権限があるほうが、対応は素早くスムーズに違いない。小さな市町村は指示と助力が欠かせないが、予算や組織の面で十二分な対応力を備える政令市が同列では説得力を欠く。
 災害救助法は制定から70年になり、時代の変化に即応できない点が指摘されてきた。「政令市を都道府県と同じ救助主体に」という訴えは阪神大震災以来繰り返されてきた経緯がある。そろそろ見直しの時機と言えるだろう。
 国や全国知事会は「委任規定の活用と連携強化で対応は十分可能」として消極姿勢を崩していない。政令市とその他市町村で対応に差が出ることへの懸念も背景にあるようだが、であればなおさら政令市の捉え直しは重要になる。
 防災の役割分担などを定めた災害対策基本法を含めて見直し、政令市に必要な権限を与え、その災害対応力を周辺市町村など広域で発揮させる仕組みづくりを急ぐべきだ。
 現実的に大都市がボランティアや支援の玄関口となる役割も考えれば、政令市が広域の災害対応の核となる意義はより大きくなる。数々の大災害を経験した政令市の知見を災害対応や防災で生かす方向で議論を深めてほしい。