政策の柱に据えた「人への投資」に異論はない。ただ、財源をどう手当てするかという肝心の問題が先送りされたとあっては、実現可能性に疑問符を付けざるを得ない。
 政府が9日の閣議決定を見込む経済財政運営の指針「骨太方針」のことである。
 素案では、幼児教育と保育の早期無償化、待機児童の解消を優先課題に位置付け、低所得世帯でも大学に通えるよう、給付型奨学金や授業料減免の拡充も盛り込んだ。
 少子高齢化に伴う働き手不足は深刻で、成長の足かせになりかねない。
 そうした中、「人材投資」を強化することにより、教育を通じて「貧困の連鎖」の解消を含む格差の是正とともに、1人当たりの生産性の向上を図り、活路を開こうとの試みだ。投資に伴う家庭の教育費の負担軽減は、結婚・出産を促す少子化対策にもなる。
 問題は財源をどう確保するかだ。幼児教育・保育の無償化だけでも約7千億円が必要という。素案は歳出の削減、税、社会保険方式を選択肢に年内に結論を得るとする。
 議論のベースになるのは社会保険、自民党の若手議員らが提唱している「こども保険」とみられる。企業や働く人から保険料を集めて子育て世帯に分配する仕組みだ。
 負担は現役世代に集中し、子どもがいない世帯・子育てが終わった世帯も負担する。このため、公平性の観点などから国民の理解をどう得るかが課題で、実現に向けハードルは高いと言うほかない。
 こうした新政策の財源論とも絡むのが財政再建問題だ。
 素案は、借金に頼らずに政策経費を賄えているかを示す「基礎的財政収支」を2020年度までに黒字化するとの従来の目標は堅持した。
 見逃せないのは、同時に、国内総生産(GDP)に対する債務残高比率の「安定的な引き下げ」を財政健全化の目標に据えたことだ。
 債務残高の増加がGDPの増加額を下回れば、数値は改善する。今の低金利下では達成しやすい目標であり、GDPの伸び率を下回っていれば借金が増えても構わないということにもなりかねない。
 黒字化目標を堅持したとはいえ達成は困難。となれば新目標がせり出し、むしろ歳出拡大に道を開くことになるのではないかと心配になる。
 「経済成長なくして財政再建なし」は安倍政権の大看板。だが赤字体質は一向に改善されていない。放漫な財政運営を今後も続けるようなら、将来世代にさらなるツケを回すことになり、許されない。
 20年度までの黒字化は国際公約といえ、未達成なら日本に対する国際的信認が損なわれる事態を招きかねない。
 財政規律を厳格化しつつ、人材投資といった新政策に必要な安定財源をどう確保するか。まずは既存の事業を徹底的に見直し、無駄を省くことから始めなければなるまい。