ことしも「あの日」が巡ってくる。宮城県沖地震(1978年)の6月12日であり、岩手・宮城内陸地震(2008年)の6月14日である。
 東日本大震災の発生によって「あの日」は3.11に置き換わったが、地震災害の恐ろしさと備えの大切さを伝える起点として、6.12と6.14の重い記憶を引き継いできたことを忘れてはなるまい。
 震災後に地震防災の呼び掛けが津波対策に集中しがちになる中で、昨年4月の熊本地震は揺れそのものへの警戒を呼び起こす機会になった。
 熊本地震の新しい記憶を胸に刻みつつ、28人と23人の犠牲が出た足元の二つの地震こそがまさに、揺れの脅威を身近に伝え残す大災害だったことを思い起こしてほしい。
 地震の揺れによる犠牲をなくすために何をすべきか。
 6.12と6.14は、地震防災の基本について再確認が迫られる重要な節目になる。家庭や地域、学校、企業で揺れへの備えを呼び掛け合い、官民挙げて防災策の総点検を進める日と位置付けたい。
 熊本地震では建物の耐震化の課題が改めて浮き彫りになった。先進地とされる宮城県内でも耐震基準を満たさない住宅がまだ全体の16%、14万5千戸に上る。「震災の揺れに耐えた」との根拠のない過信が広がり、最近は改修の動きが鈍くなっているという。
 行政側の一層の働き掛けが必要だが、住民側に積極的に耐震診断を受け、改修に乗り出す意欲がなければ耐震化は進まない。個人や家庭レベルで命を守る意識を高め、必要な対策を急ぐことが肝心だ。
 仙台市はことし「市民防災の日」と定める6.12に、新しく市民参加型の訓練を設定した。午前9時に、警戒する長町-利府断層帯を震源とする直下型地震が発生したとの想定で、その場で身を守る行動を取るよう呼び掛ける。
 姿勢を低くし、机の下に潜るなどして頭を守り、揺れが収まるまで動かない。シェイクアウトという米国発祥の安全行動に基づく。予兆もなく激しい揺れが襲う直下型地震は瞬時の防御行動が生死を分けるが、とっさの対応は訓練や練習でしか身に付かない。
 津波避難でも、揺れへの対応を万全にして避難を可能にすることが大前提になる。
 防災訓練の参加者が一部の固定した関係者にとどまる課題が指摘される中で、市民一人一人に瞬時の災害対応を求める試みは注目できる。
 家具の固定や出入り口確保の確認と併せて、自分の身を自分で守ることの大切さを共有する機会としたい。
 海溝型で都市直撃の宮城県沖地震、直下型で山間地被災の岩手・宮城内陸地震。タイプの違う大地震の経験を併せ持つ地域は珍しい。震災の津波被災と共に、地震防災を総合的に発信する役割を私たちは負っている。一人一人の備えの確認はそのまま全国への強いメッセージになる。