「安倍1強」の強権政治が、如実に現れた結末と言えよう。数の横暴が頂点に達したという思いを強くする。
 自民、公明の与党はきのう、参院法務委員会の採決を省略するため「中間報告」という「奇策」までをも使って、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の会期内成立に突き進んだ。
 国会は法案の審議などを通じて、政府の暴走をチェックするのが責務である。中間報告は国会法で認められているとはいえ、審議の機会を事実上奪う「禁じ手」にほかならない。
 与党の参院議員は「再考の府」としての責任を放棄したに等しい。参院自らの存在を否定する「自殺行為」だ。「国会の歴史に大きな汚点を残した」(民進党)と非難の声が上がるのも当然だろう。
 なぜそんなに急ぐのか。安倍晋三首相の周辺でくすぶり続ける「疑惑」と無関係であるまい。
 安倍首相の親しい知人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の記録文書問題や、首相夫人との関係が取り沙汰された同「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題がクローズアップされてきた。
 当初は会期(18日まで)の小幅延長を検討していたとされるが、このまま延長すれば野党の追及にさらされるのは明らかだ。東京都議選(7月2日投開票)への影響も考えて、早期に幕を引きたかったのではないか。「疑惑封じ」と指摘されても仕方があるまい。
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法案は過去に3度廃案になった経緯があり、野党は「内心に踏み込み、監視社会につながる」と強く批判してきた。
 にもかかわらず、委員会での審議時間は衆院で約30時間、参院では約18時間。到底審議が尽くされたとはいえず、しかも「生煮え」だった。
 一般人が捜査の対象となるのか、組織的犯罪集団の定義とは何か、どうやって準備行為を見極めるのか-。
 国会審議では、こうした根本的な疑問に対する政府の答弁は一貫性を欠き、審議すればするほど、曖昧で不完全な法の実態が浮かび上がった。
 論議が深まらなかった最大の理由は、答弁が定まらない金田勝年法相の迷走ぶりだ。
 同じ答弁を繰り返したり、追及されると立ち往生して事務方に助け舟を求めたりして、「時間の浪費」と非難された。安倍首相の任命責任が問われよう。
 この法律で日本の刑事法の原則が変わる。国民の権利を脅かす疑念が残されたまま、運用が捜査機関に委ねられることに不安は拭えない。
 歴代の自民党政権には野党の異なる声にも耳を傾ける謙虚さがあったが、安倍政権の体質は全く違う。
 首相が執念を見せる憲法改正を展望する時、その強引な手法に懸念は募る一方だ。