訪日外国人旅行者(インバウンド)の誘致を進める上で、常に課題とされてきた2次交通の利便性向上に向けた取り組みが、民間主導で始まった意義は大きい。
 この春、運行を開始した仙台空港と山形、鶴岡、酒田の各市を結ぶ高速バス路線である。
 個人で国外を旅行する際に何かと心細いのが、不案内な駅での乗り換えだ。団体から個人へと旅行形態が変わっていく中、「空港直結」は強い訴求力を持っている。
 海外5都市と定期便を持つ仙台空港が東北の横軸に直結することで、宮城、山形両県を中心とした外国人旅行者向けの周遊ルート確立に弾みがつくことを期待したい。
 国土交通省によると、2016年に東北6県に宿泊した外国人は、前年比22%増の延べ64万1020人(速報値)。調査を開始した07年以降で最多となった。
 とはいえ、東京や京都、大阪といった「ゴールデンルート」を中心とする全国的な伸びと比較すれば、東北はまだ東日本大震災以降の低迷から脱し切れてはいない。
 宮城、山形両県の関係者はこの機会に、お互いの観光地の魅力磨きや旅行商品の開発、国内外に向けた情報発信など、さまざまな領域で連携を強めていく必要があろう。
 山形県側では既に、自治体や企業が協力し合い、仙台空港を利用する国内外の旅行者を呼び込もうと、広域的な準備が進んでいる。
 仙台圏に隣接する村山地域の中核を担う山形、天童、上山の3市の取り組みが、その好例だ。官民共同で設立した株式会社「おもてなし山形」が主体となって、観光ルートの中で「結節点」となる旅行商品の企画から販売まで手掛けようとしている。
 宿泊客の収容能力は、3市合計で山形県全体の約6割を占める。有名温泉街を擁する自治体が連携し、相乗的に強みを生かす狙いだ。
 さらに仙台空港-鶴岡、酒田間の高速バスの運行主体である庄交グループ(鶴岡市)は外国人旅行者を日本海側の庄内地域まで引き込もうと、昨年12月に「庄交価値創造研究所」を創設し、山岳信仰などをテーマに具体的な旅行商品の開発に乗りだしている。
 山形県管理の山形、庄内両空港は国際定期便こそないものの、仙台、福島両空港にはない羽田便を持っている。
 同県は近年、羽田からの誘客に力を入れており、外国人旅行者が東からも西からも仙山圏を巡る時代の到来を視野に入れる。
 そもそも高速バス路線を活用した広域的な訪日誘客は、国管理の空港として全国初の民営化に挑んだ仙台空港の成長戦略の柱でもある。
 山形側で進む準備に比べて、宮城側の取り組みは果たして十分か。山形側に呼応した動きが広がっていくことを期待したい。