高齢者や外国人、不登校の子どもたちが同じ校門をくぐって共に学ぶ。そうした光景が東北各県にないままで、本当にいいのだろうか。
 一般の中学校とは別に義務教育の機能を果たす公立の夜間中学。東北にはただの1校も存在していない。
 夜間中学は主に戦中戦後の混乱などで義務教育を修了できなかった人たちのため、とされてきた。それが、日本語のままならない外国人や不登校の生徒の増加などで、多様な学びの場としての役割が期待されるようになった。
 昨年12月に議員立法で成立した教育機会確保法は、夜間中学による修学機会の提供を地方公共団体に義務付けた。文部科学省が今春策定した教育の機会確保に関する基本指針は、各都道府県に最低1校の設置が必要だとした。
 ところが、実際には8都府県に31校しかない。全くない東北では自主運営校が仙台、福島両市にあるだけで、市民グループが教育行政の一部を担っているのが実情だ。
 東北各県の教育委員会に聞いてみると、もっと残念な実態が浮き彫りになる。宮城を除く5県は、設置検討の動きすら滞っている。
 岩手、福島両県は2016年度、検討委を設けて必要性を調査したが、「現段階でニーズは多くない」(岩手)などと判断された。他の3県は「設置要望はない」(青森)「フリースクールなどで十分」(秋田)「必要性は感じていない」(山形)として何の動きも起こしていない。
 しかし、本当にニーズはないと言い切れるだろうか。学齢期を過ぎながら義務教育を修了していない「未就学者」は東北6県で約1万2千人(10年国勢調査)。青森(2687人)福島(2344人)秋田(2145人)の3県は2000人を超える。
 小中学校の不登校は15年度調査で、青森、岩手、宮城、福島の4県が前年度を上回るなど増加傾向が続く。
 岩手、福島両県が取り組んだニーズ調査も十分とは思えない。福島は市町村のホームページに「(夜間中学に)関心のある方はご連絡ください」と教育事務所の電話番号などを掲載した程度だ。
 例えば、引きこもりで不登校となったケースなど、そもそも夜間中学を必要とする人が積極的に声を上げることは考えにくい。表面化しない潜在的なニーズをどうすくい取るかに知恵を絞ることが教育行政に求められている。
 東北では唯一、宮城県と仙台市が共同で検討を継続している。本年度はニーズ調査に加え、カリキュラム編成や教員研修などに関する調査・研究を進める方針だ。
 両教育委員会にはぜひとも、多様な学びの場となり得る公立夜間中学の実現を目指してほしい。「ニーズはない」と安易に決めつけている東北の教育行政の現場に、風穴を開けることを期待したい。