東北に初めて誕生する「高速環状線」の効果を幅広い分野に波及させ、新たな豊かさの創造につなげたい。人・モノ・情報の動きが大きく拡大する機会を前向きにとらえ、地域の強みを生かす取り組みが求められる。
 東北中央自動車道(相馬-横手間、268キロ)の福島大笹生(おおざそう)-米沢北インターチェンジ(IC)間が本年度内に、南陽高畠-山形上山IC間が来年度内にそれぞれ開通し、南東北3県の県庁所在地と米沢市を結ぶ、ひし形のループが形成される。
 仙台、福島、米沢の3市は東北の製造品出荷額の上位5市に入る都市だ。
 東北中央道の開通が、ものづくりや物流、企業立地の分野で大きなインパクトを与えるのは間違いない。ひし形のループに仙台北部、東部、南部各道路による環状線を加えると、10市8町が高速網で結ばれることになり、このエリアの製造品出荷額は年間3兆5000億円規模に達する。
 一方、サクランボやブドウ、洋ナシなど、果物づくりが盛んな山形県の各産地にとっては、首都圏への輸送時間の短縮も期待できる。救急医療の対象エリアの拡大が見込めるのに加え、大災害で一部の高速道や空港が機能しなくなっても、代替路線の幅が広がることで、避難や救援の迅速化につながる。
 どの側面からも沿線地域の活力を高め、安全・安心な暮らしを支える新たなインフラとなるのは確実だ。
 とりわけ、地域の魅力と交通・宿泊などの要素が結びつくことで誘客の可能性が広がる観光は、沿線地域の連携した取り組みで、最も環状線の効果を引き出す余地のある分野と言える。
 秘湯に恵まれた米沢市周辺は、あまり目立つことはなかったが、これまでも熱心な温泉ファンが海外からも訪れていた。車を降りて山道を歩かなければたどり着けないような一軒宿が、国内外のマニアの人気を集めている。
 麓までの交通の便利さが増すことで、不便さの中にある秘湯の魅力が引き立つ。中央道の開通は仙台圏、首都圏からの誘客に追い風になるはずだ。
 ことし生誕450年を迎え、改めて、その生涯に注目が集まる仙台藩祖伊達政宗ゆかりの地も沿線に点在する。青年期まで過ごした生誕の地・米沢市に加え、「梵天(ぼんてん)丸」と呼ばれた少年時代に不動明王像から「破邪顕正」の教えを学んだとされる高畠町など、見どころは尽きない。ストーリー性を持たせて各地を結び付けることが大切だろう。
 空港や新幹線駅から高速道を利用する旅行者を想定した準備も必要になる。仙台空港と米沢市を結ぶ高速バス路線は既に相当のニーズがありそうだ。
 「環状線」を意識しながら他の地域と連携し、その効果を最大限に引き出したい。