濁流と共に大量の流木に埋め尽くされた集落、無残に押し流されたJR線の鉄橋、避難所で不安にかられている住民…。またしても、自然の猛威を見せつけられた。
 異例の経過だった。4日から5日にかけ、西日本を横断した台風3号が足早に東海上に去ったと思ったら、息つく間もなく中国地方と九州北部を豪雨が襲った。
 「数十年に1度程度」の大災害が迫っているとして気象庁は5日午前、「大雨特別警報」を島根県に発表。昼には解除した。しかし、夕方には福岡、大分の両県に「飛び火」した形で再び同警報が出され、豪雨は九州北部を中心に甚大な被害をもたらした。
 6日午前までの24時間雨量が、540ミリ超という記録的豪雨を観測した福岡県朝倉市では、川が氾濫。流木などに埋もれていた男性の遺体が見つかった。隣接する大分県日田市でも土砂崩れに巻き込まれた男性が亡くなった。
 行方不明者や安否が確認できない人がまだいる。
 土砂崩れの危険が拭えず雨がまた降りだすかもしれない中、自衛隊などによる孤立者の救助、不明者の捜索が行われている。時間との闘いになる。全力を尽くしてほしい。
 台風や大雨の常襲地とされ度々、災害に見舞われてきた九州の住民ですら、「これほどの大雨は人生で初めて」「どうしてこんなことに」と悲嘆するほどの豪雨だった。
 気象庁によると、活発な梅雨前線が、九州の北に長時間停滞したのが原因だ。そこに大量の水蒸気を含んだ空気が流れ込み、積乱雲が次々に発生。猛烈な雨を降らせた。
 雨雲が数時間にわたり帯状に並び、同じ地域に集中豪雨をもたらすことから「線状降水帯」と言われる。専門家の間では2014年8月の「広島豪雨」、15年9月の「関東・東北豪雨」なども含め、大災害を引き起こす近年の集中豪雨は、この現象が作用しているとの見方が強い。
 海水温など列島周辺の微妙な環境変化が雨の降り方に影響を与えているとすれば、これらの豪雨も「異常気象」とは言えない段階に入っている。地震・津波だけでなく、豪雨災害も、もはや日本全国どこででも起こり得ると考えた方がいいのではないか。
 今回の被害の全容はまだ十分に見通せないが、特別警報の発表のタイミングは適切だったか。計20回近くに上った記録的短時間大雨情報の出し方が、住民の避難行動にどう生かされたかを検証し、今後の対策の教訓にしてほしい。
 台風シーズンはまだ始まったばかりだ。1時間100ミリクラスの豪雨に、その場で対処するのは難しい。気象庁は「避難場所や避難にかかる時間を普段から考えておくことが大切」と指摘している。
 一人一人の命を守るため、家族や地域と声を掛け合って行動する。自助と共助。防災の基本に立ち返りたい。