東日本大震災からのポスト復興の将来像をどう描くのか-。任期満了に伴う仙台市長選がきょう9日告示され、23日に投開票が行われる。
 今回の市長選は、3選出馬が有力視されていた奥山恵美子市長の予想外の引退表明で、「無風」と見られていた選挙が一変した。いずれも無所属新人の4氏がこれまでに立候補を表明している。
 与野党対決の構図もうかがえるが、政策面では市民を二分するような際立った対立軸は見当たらない。それぞれ独自のカラーを鮮明に打ち出し、論戦を闘わせてほしい。
 奥山市政は、震災復興対応に追われたと言っても過言ではない。防災集団移転促進事業や災害公営住宅の整備が完了するなど、ハード面は一段落した。被災者の生活支援、被災地との連携や防災・減災といったソフト面は引き続き取り組むべき課題だろう。
 ポスト復興のまちづくりも争点の一つだ。地下鉄東西線沿線のにぎわい創出、中心商店街の活性化、市役所本庁舎の建て替え、音楽ホール整備構想など課題は少なくない。
 少子高齢化対策も重要なテーマである。まずは福祉を支える財源をどう確保していくのか。保育所の待機児童解消、いじめ防止といった子育てからの視点も欠かせない。
 身近な問題だけでなく、東北の中枢都市として何を果たすべきか、という「骨太」の論議も求めたい。東北の首長たちは仙台市にけん引役を求めているからだ。
 小野寺晃彦青森市長は「経済振興、観光、防災などの分野で東北各県・各市をリードしてほしい」、佐藤孝弘山形市長は「両市を結ぶ交通網を改善し、仙山交流を深化させたい」と訴えている。
 生え抜きをトップに頂いた奥山市政の評価も避けて通れない。役所主導ではなく「市民との協働」を掲げたスタンスは共感を呼んだ。その半面、身内に甘い「市役所一家」ともやゆされた。
 象徴的なのが2期目に続発した不祥事や不手際である。2014年の衆院選で青葉区選管による票の水増し問題が発覚し、その後も選管のずさんな開票のミスが相次いだ。
 青葉区折立中2年の男子生徒の自殺を巡っては、市教委の対応を見かねた文部科学省が、指導に乗りだすはめに。この生徒に対する体罰も、保護者の通報があるまで把握されていなかった。
 意識改革が本当に進んでいるのかどうか、疑念が拭えない。組織風土を改善させる「刷新の風」を吹き込む必要があるのではないか。そのためには陣頭に立つ市長に、クリーンで厳正な姿勢が求められることは言うまでもない。
 仙台市政には古くはゼネコン汚職事件、近年では不適切なタクシー券利用問題でトップが失脚した負の歴史がある。トップの座に就く者はその「十字架」を背負っていることを忘れてはなるまい。