多国間による国際協調主義に「米国第一主義」が、また一つ、大きな亀裂を生じさせた。予想されていたこととはいえ、残念と言うほかない。
 トランプ米政権発足後初めて、ドイツで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合のことである。
 日米欧に中ロを含む新興国を加えたG20は、世界経済の成長エンジンであり、金融危機といった国際的な大問題に対処する枠組みでもある。その中で亀裂が深まれば、危機対応どころか、世界経済にとって、むしろ新たな不安材料となりかねない。
 そうした事態は避けなければならない。日本を含め主要各国は、トランプ政権に「翻意」を促し続けたい。
 採択された首脳宣言で亀裂を端的に物語るのは、米国が離脱を決めた地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に関するくだりだ。「米国以外のG20首脳」は「後戻りしないと明言する」とうたう。
 「1対19」である。米国が離脱しても、残る19カ国は、決して後退することなく協定の実現に取り組むとの決意表明だとしても、対立の図式は明々白々だ。
 最大の焦点だった反保護主義を巡る記述についても、イタリアでの先進7カ国(G7)首脳会議と同様、亀裂を覆い隠す両論併記となった。
 「保護主義との闘いを続ける」と明記した上で、保護主義的手法も辞さないトランプ政権が受け入れやすいよう、不公正な貿易相手国に対し、例えば関税の引き上げといった「正当な対抗措置」を認めるとの記述も盛り込んだ。
 この表現は、「不公正な貿易慣行に立ち向かう」としたG7首脳宣言より具体的で、独自判断で貿易の障壁を設けることを容認、自由貿易の後退につながりかねない。
 米政権は、幅広い国を対象に鉄鋼製品の輸入制限を発動すると警告している。
 ただ、貿易を制限すれば、製品の値上がりといった打撃を自らが被り、相手国との貿易上の「報復合戦」に発展する恐れもある。そうなれば世界経済を揺るがしかねない。
 輸入制限措置を発動しないよう、米国に求めたい。
 米国は世界最大の経済大国だ。米国抜きのG19では、自由貿易体制が揺らぎ世界経済は安定しない。温暖化対策も軸の一つを欠く。そのことをトランプ氏が再認識するまで説得を続けるしかあるまい。
 そうした点で、G20直前に日欧が経済連携協定(EPA)で大枠合意し、自由貿易を守るメッセージを発した意義は小さくはない。
 ただ、自由貿易推進を掲げる国々はトランプ政権誕生を「反面教師」とせねばなるまい。その背景には、グローバル化が格差の拡大を招いているとの不満があるからだ。
 安倍政権には、日欧EPA合意という成果を誇るだけでなく、国内の格差是正にも実のある取り組みを求めたい。