「初めから加計(かけ)学園に決まっていた」「不公平、不透明な部分がある」「背景に官邸の動きがあった」-。
 安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」が、獣医学部を愛媛県今治市に新設する計画を巡り、前文部事務次官の前川喜平氏が参考人として国会の閉会中審査で証言し、官邸の関与を明確に指摘した。
 文部行政をつかさどるトップとして、問題の全容を知る立場にあった人物の国会での発言は重い。しかも内容は本人しか知り得ず、具体的で詳細だった。
 政府側は従来の答弁の範囲内にとどまり不十分で、説得力に欠けた。菅義偉官房長官が「憶測や推測に基づく発言が多くあった」と批判するなら、「記憶はない」(萩生田光一官房副長官)などと釈明せず、具体的な根拠を示して反証すべきではないか。
 これでは疑念が晴れたどころか、さらに深まったと言わざるざるを得ない。
 渦中の萩生田副長官だけでなく、前川氏から「さまざまな動きをしていた」と名指しされた和泉洋人首相補佐官の証人喚問を含め、今後も国会の場で審議を続けることは真相解明に不可欠だ。
 論点は特区制度による事業者選定の過程で、行政がゆがめられた事実はあったのか。そこに首相や官邸がどう関わったかだった。
 文部科学省の調査では確認されなかったが、萩生田副長官が文科省の幹部に対して「私のところで整理しよう」と、加計学園を前提としたかのような「発言概要」が明るみになっている。
 前川氏は「担当課から受け取った文書に間違いない」とした上で、「背景に官邸の動きがあった。加計だけが残るようにプロセスを進めてきた」と明言した。しかし、萩生田副長官は文科省の幹部との面会を認めながら、「つまびらかに発言した記憶はない」と述べるにとどまった。
 政府や与党に「行政をゆがめてきたのは既得権益を守ろうとする勢力だ」との主張があるが、加計問題と規制緩和との関連性が希薄であることが浮き彫りになってきた。
 安倍首相が先月、講演で「特区を1校に限定して疑念を招いた。速やかに全国展開したい」と表明したのは、これを裏付けている。
 首相の意向で何校でも開校できるなら、これまでの特区制度の議論は何だったのか。
 前川氏が「今治市での成果を評価した上でのことになるはずだ。少なくとも10年内外は必要。今すぐ2校目、3校目を造ることはできない」と語るのもうなずける。
 首相が不在での閉会中審査は、「安倍隠し」と言われても仕方があるまい。「説明責任を果たす」と神妙に語ったのが本心であるならば、欧州歴訪から帰国後、臨時国会を早急に開き、自らの口で国民の疑念に丁寧に答えるべきだ。