物事の進め方がどうも違うのではないか、そう思えてならない。
 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)大枠合意を受けた政府の対応だ。
 きのう、国内対策の基本方針を決めた。その方針に基づき、秋をめどに、農林水産業の支援を柱とした総合的なEPA対策をまとめるという。
 高品質なEUの農林産物が安価で輸入されるようになることに、農業者らから不安の声が上がる。対策は必要であり、検討するのは当然だ。
 だが、その前に取り組まなければならないことがある。
 大枠合意に至るまで、交渉に関し政府から説明は一切なかった。しかも、急な合意。農業者らは何も知らされず、ずっと蚊帳の外にいる。不安が募るのも無理はない。
 交渉の経過と結果について国民に対し、丁寧に説明するのが先なのではないか。
 「成長戦略の切り札だ」(安倍晋三首相)というなら、国内総生産(GDP)押し上げ効果はどの程度なのか、農業分野にはどのようなマイナスの影響があるのか。いずれについても試算し、同時に明らかにしてもらいたい。
 そうした影響試算を踏まえて対策が議論されるというのが、本来の筋道なのではないか。そう指摘しておきたい。
 日本と違いEU欧州委員会は影響試算を公表している。協定が発効すれば、域内総生産は最大で0.76%増加。中でも、チーズや肉類を含む農産加工品の輸出は最大180%、金額で100億ユーロ(1兆3千億円)増えると見込む。
 EUのプラスは、国内市場が拡大しない限り日本にとってはマイナスに働く。この試算の指摘通り、悪影響が懸念されるのは、チーズに低関税輸入枠が設けられる酪農や、関税の引き下げが決まった牛・豚肉の生産者らである。
 酪農が盛んな北海道では離農が相次ぐ事態も予想され、地域社会そのものにも打撃が及びかねない。
 九州各県同様、東北6県にとっても豚、肉用牛はいずれもコメ、リンゴなどに次ぐ主力の農産物であり、地域農業が受ける影響は少なくない。
 そうした懸念や不安と、政府は真っ正面から向き合わなければならない。影響試算にも直ちに取り組み、各地方で説明会を開催し、その結果についても明らかにすべきだ。
 その中で、交渉と結果を巡る農業者らの疑問や批判にこたえるとともに、広く意見を聴取し、その声を対策づくりに生かす、そうした手順を踏むことが重要だ。
 秋までに策定される総合対策に必要な事業費は、秋以降に編成される本年度補正予算案や来年度予算案に盛り込まれるという。その財源は言うまでもなく税金である。
 密室ではなく、オープンな形で影響の評価と対策づくりが行われることは、納税者の理解を得る上でも大切なことではないか。