輸送コンテナなどに紛れ込んだとみられる南米原産の強毒アリ「ヒアリ」が5月以降、5都府県の港や内陸部で見つかっている。東北では今のところ確認されていないが、油断は禁物だ。侵入に警戒を怠るべきではない。
 国際貿易が盛んになる中、港に陸揚げされる多量のコンテナの隅々まで調べるのは至難の業とはいえ、定着、繁殖してからでは手遅れになってしまう。水際で早期発見、早期駆除を徹底すべきだ。
 ヒアリは、侵入すると従来の日本の生態系に被害を及ぼしかねない「特定外来生物」に指定されている。体長2.5~6ミリで赤茶色。主に公園や農耕地などにドーム状の巣を作り、集団で活動する。
 攻撃性が強いため、アリや巣に近づくのは危険だ。刺されると、やけどのような激しい痛みを伴い、うみが出る。
 最も心配しなければならないのは重いアレルギー反応(アナフィラキシーショック)。最悪の場合、呼吸困難に陥り死亡することもあるため、容体が悪化したらすぐに病院に行く必要がある。
 国内で初めて確認されたのは、中国・広州市の南沙港から5月に神戸港に到着し、兵庫県尼崎市に運ばれたコンテナ内だった。後に爆発的な繁殖能力のある女王アリがいたことが確認されている。
 内陸部で見つかったのも懸念材料だ。南沙港でコンテナに積み込まれて名古屋港に到着し、愛知県春日井市内の倉庫で降ろされた荷物に付着していた。これまでも貨物と共に侵入したケースがあったと考えるのが自然で、モニタリング調査を強化すべきだ。
 南米から分布が広がり、現在では米国、マレーシア、オーストラリア、中国、台湾など10カ国以上に及んでいる。こうした被害国が取り組んだ対策から、教訓を学びたい。
 2001年ごろに巣が見つかったオーストラリアは定着を防ぐことができずに、その後15年間で対策費270億円を投入するはめに。逆に同じ時期に見つかったニュージーランドは巣の周辺に危険エリアを設けて監視を徹底することなどで、1億2000万円で駆逐に成功したという。
 日本では環境省、国土交通省などが、中国やオーストラリアなどとコンテナ船定期航路がある仙台など全国68港に、殺虫餌を設置し水際対策を強化する方針を決めた。
 ただ、こうした対策だけで十分だろうか。関係省庁が自治体と共に一体的な組織をつくり、国を挙げて防除に対処する体制を早急に構築すべきではないか。
 そもそも一般市民からすれば、ヒアリと普通のアリとの見分けすらできない。「正しく恐れる」ためにも、幅広い情報提供が不可欠だ。
 1995年に発見されて以降、多賀城市など全国各地で見つかった外来種の毒グモ「セアカゴケグモ」の二の舞いを演じてはならない。