メルトダウン(炉心溶融)に陥った東京電力福島第1原発1~3号機について、水を張らずに溶け落ちた核燃料を取り出す「気中工法」が浮上している。東電を支援する原子力損害賠償・廃炉等支援機構が検討しているという。
 これまでは水中で行う「冠水工法」が有力視されていたが、原子炉格納容器の破損が激しく、水で満たすことは困難という判断らしい。
 水中での作業にならない場合は、放射性物質が飛散する恐れがあり、前もって万全の対策を取る必要がある。
 取り出し方法はこの夏にも固まる見通しだが、いずれの工法を採用するにせよ、極めて慎重な検討が求められている。福島県にもしっかりと説明し、了解を得てから最終決定すべきだ。
 メルトダウンした核燃料には強烈な放射能が伴い、取り出しは至難の業だ。世界でも米スリーマイルアイランド(TMI)原発しか例がない。
 福島第1はより厳しい作業を強いられることが確実視されている。TMIは2号機1基だが、福島第1は3基。さらにTMIでは原子炉圧力容器の中に核燃料がとどまったに対し、福島第1は3基とも圧力容器を突き破って外側の格納容器に落下した。
 強烈な放射性物質を扱う場合、一般的には水中で行うのが安全。水によって放射線が減衰するし、空中への飛散を防ぐこともできる。TMIも冠水させて取り出した。
 福島第1で冠水工法を実施する場合、格納容器内を安定的に水で満たすことが不可欠だが、水素爆発などで損傷し水漏れを防ぐことが難しいとみられる。
 ただ、気中で行う場合も課題は多い。原発事故以来、溶け落ちた核燃料を水で冷やし温度上昇を防いでいる。水なしで冷却はどうなるのか。冷却不要になるまで温度が下がる保証はあるのだろうか。
 放射線量が冠水工法より高くなるのも確実で、厳しい作業環境になる。取り出し中に外部に放射性物質が飛散する心配もある。放射線の遮蔽(しゃへい)や飛散防止によほど注意しないと、思わぬ事態に見舞われかねない。
 いたずらに工法決定を急がず、3基の原子炉内の状況をできるだけ調べた上で、柔軟に検討していくのが現実的ではないだろうか。どの工法を採用しようと未経験の困難が待ち受けているのだから、まず調査と準備に全力で取り組むべきだ。
 どれほど難しくとも、溶け落ちた核燃料の取り出しに失敗は許されない。取り出せずに残るような事態は「廃炉」とは言えず、福島県は到底容認できないだろう。
 完全な廃炉の責任を負うのは当然ながら、東電と国。一部の技術者が決めるのではなく、必要なデータを公開しながら多くの専門家の知見を集め、最も確実で安全な方法を採り入れなければならない。