南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を破棄したとしながら、陸上自衛隊に電子データが保管されていた隠蔽(いんぺい)疑惑で、新たな問題が浮上した。
 稲田朋美防衛相が2月15日の防衛省最高幹部による緊急会議で、保管の事実を非公表とする幹部からの方針を了承していたという。複数の政府関係者が明らかにした。
 稲田氏は全面否定しているが、事実ならば、本人の辞任はもちろん、安倍晋三首相の任命責任が厳しく問われるのは言うまでもない。
 防衛省・自衛隊の組織的な隠蔽工作を稲田氏が容認した形になるだけでなく、一連の経緯について報告を受けていないとした国会答弁が虚偽だったことになるからだ。
 国民に対する重大な背信行為が指摘されている以上、稲田氏は説明責任を尽くさなければならない。24日に行われる衆院予算委員会集中審議で一連の問題を丁寧に説明し、疑念を晴らすべきだ。
 防衛省は昨年10月、日報の情報公開を求められ、「破棄済み」として不開示にした。再探索した結果、同12月に統合幕僚監部で電子データが見つかり、その後陸自でも保管されていた事実が発覚した。
 驚くべきことは防衛省の隠蔽体質だ。緊急会議では陸自のデータは隊員個人が収集したもので公文書に当たらないという理屈で、公表しない方針が決まったという。
 「今更陸自にあったと言えない」という内部の論理を優先する姿勢の背後にあるのは何なのか。森友学園、加計(かけ)学園問題でも指摘された「安倍1強」政治の弊害が浮き彫りになってくる。
 日報には昨年7月、南スーダンの首都ジュバで起きた政府軍と反政府勢力との間の大規模な武力衝突について記載があった。憲法上問題になりかねない「戦闘」という言葉を巡って、稲田氏の不安定な答弁が野党から追及された。
 ここでデータの存在が明るみに出れば、安倍首相の「秘蔵っ子」である稲田氏にさらに傷が付く。批判から遠ざけよう。防衛省内にそんな「壮大な忖度(そんたく)」が働いていたというから、国民不在も甚だしい。
 内向きの体質にメスを入れ、うみを徹底的に出さなければならない。防衛監察本部による特別防衛監察を実施しているが、自浄作用は到底、期待できそうもない。関係者の処分は当然だとしても、幹部の人心一新が求められる。
 そもそも、稲田氏の防衛相としての資質に問題があったのは明白だ。東京都議選で不適切な応援演説をしたり、九州北部を襲った豪雨の際に防衛省を一時不在にしたり、物議を再三醸し出してきた。
 そのたびに安倍首相は更迭に踏み切らず、かばうような姿勢を取ってきた。自衛隊の信頼が揺らいだ今、「お友達内閣」の限界が見えたのではないか。内閣改造の交代では無責任、遅きに失する。