福島県は、東京電力福島第1原発事故後に続けるコメの放射性物質濃度検査の在り方を再検討する方針を決めた。県産米の安全性を担保してきた全量全袋検査を見直す動きとなるだけに、まずは慎重で徹底した議論を求めたい。
 再検討に当たっては近く、農業団体や有識者らの検討組織を設置。関係者や消費者らの意見を聞くなどして、年度内に今後数年間の検査の方向性をまとめる予定だ。地域によっては抽出方式に変更するなど、新たな体制に移行する可能性がある。
 背景には、これまでの検査結果と現場の負担感がある。
 全量検査は2012年産から実施しており、放射性物質濃度が国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える例は年々減少。15、16年産の直近2年間については、販売用の基準値超えが全くなかった。
 一方、生産現場には「検査場に持ち込む作業の負担が大きい」などの声がある。全量検査を続けることが「かえって安全性を危惧する風評を固定化する恐れがある」との指摘も出ているという。
 年間経費の約56億円は大半を東電に損害賠償として請求し、残りは国の補助金を充てている。このまま金銭的な地元負担が生じないとしても、生産現場の苦労は変わらず、「再検討の時期にある」との意見は理解できる。
 ただ「全量全袋」という徹底した手法が、県産米の信頼回復作業で大きな役割を担ってきたのは間違いない。
 全量検査の事実がまだまだ、全国に浸透していないという課題もある。県が今年2月に行ったインターネットによる消費者アンケートでは「知らない」との回答が、首都圏で4割弱、阪神圏、中京圏でともに5割超に上った。
 福島では全量検査の継続を望む消費者が少なくない。消費者団体が昨年実施した県民アンケートによると、継続希望が7割を超えた。このうち約40%が必要な期間を「5~10年間」と回答。次いで「10年以上」が30%に達した。
 県内では避難指示解除などに伴い、営農を再開する地域が拡大している。今後の見直しでは、全量検査を旧避難区域に限るといったことも考えられるが、消費者団体関係者は「いったんやめてしまえば信頼性が揺らぎかねない。全量検査の見直しは慎重であるべきだ」と言う。
 大切なのは、こうした多様な意見をきちんと、くみ取ることだ。再検討を望む側も全量検査の継続を求める側も「風評を払拭(ふっしょく)したい」との思いは共通している。
 生産現場はどんな苦労をしているのか。何が風評の払拭を妨げ、どうすれば本当に払拭できるのか。コメの放射能検査の再検討に当たっては、これまでの成果を検証するとともに、風評という難敵の本質を問い直すことが必要だ。
 方法論を話し合うだけの場にしてはいけない。