任期満了に伴う仙台市長選はきのう投開票が行われ、無所属新人で民進、社民両党が支持し共産、自由両党が支援した元民進党衆院議員郡和子氏(60)が、自民、公明両党などが支持した無所属新人の菅原裕典氏(57)ら3人を破り初当選した。
 東日本大震災からのポスト復興のビジョンをどう描くのか、少子高齢化社会をどのように乗り切っていくのか。東北の広域連携のけん引役も求められる。まずは新市長のリーダーシップに期待したい。
 今回は市民を二分するような明確な対立軸がなかった。その分、与野党対決が色濃く出た戦いの構図となり、勝敗の行方が安倍政権の評価につながるとして注目された。
 加計(かけ)学園問題などによる内閣の支持率急落、都議選での自民の歴史的惨敗を受け、その流れが地方にも及んでいるのかどうかを占う意味での「試金石」でもあった。
 河北新報社の出口調査によると、加計学園問題などを批判した郡氏が「アンチ安倍」の追い風に乗り、菅原氏は猛追したものの、逆風に抗しきれなかったことが浮き彫りになった。政権には打撃だろう。
 郡氏は内閣不支持層の約6割の投票を得た。民進の8割近くを固め、無党派層のほぼ5割に浸透。自民の2割超にも食い込んだ。菅原氏は自民の6割超にとどまり、無党派層も3割程度だった。
 野党4党による郡氏への支援態勢は昨年7月の参院選で全国に先駆け、勝利に結びつけた「宮城方式」の再現。激戦を物にした民進は面目を保った形で、次期衆院選への野党共闘にも弾みが付いた。
 菅原氏陣営は、政党色を薄めた選挙戦を展開。村井嘉浩宮城県知事の全面的な支援を受けて、二人三脚で知名度不足をカバーした。ただ、村井知事があまりにも前のめりで、「市政への介入だ」との批判が付きまとった。4選を目指す10月の知事選にしこりを残したのではないか。
 出口調査では有権者が重視したのは「地域経済活性化」「子育て・少子化対策」「医療・福祉」で、郡氏が訴えた政策と重なる部分が多い。
 妊娠から子育てまで一括支援する「仙台版ネウボラ」、給付型奨学金制度の創設など、子育て世代や若者を意識した、女性ならではの主張が受け入れられた感じだ。
 逆に物足りなかったのは「市役所改革」の視点だ。生え抜きでない郡氏の手腕の見せどころで、「甘さ」が指摘される組織風土を刷新する大なたを振るってほしい。
 郡氏は少数与党での船出となりそうだ。議会対策に苦慮するだろう。ただ、オール与党体制が本来の望ましい姿ではない。議会側がチェック機能を正常に働かせれば、市政に緊張感をもたらすからだ。
 選挙戦で打ち出した公約を着実に具現化できるのかどうか、これから郡氏の覚悟、実行力が問われることになる。