関係者の水掛け論に終始し、国民の不信が解消されたとはとても言えない。うそを言えば、偽証罪に問われる証人喚問でなければ、もはや真偽をはっきりさせるのは不可能ではないか。
 安倍晋三首相の友人である加計(かけ)孝太郎氏が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設を巡る問題である。
 「自分に疑念の目が向けられるのはもっともだ」。安倍首相はきのう行われた衆院予算委員会の閉会中審査で、これまでの国会答弁が不十分だったとの認識をにじませた。
 謙虚さを演出したのだろうが、答弁内容にはほとんど変化はなかった。加計学園が国家戦略特区の事業者に選ばれるよう便宜を図ったかどうかは繰り返し否定。「一点の曇りもない」と述べた。
 驚くべきことは、同学園の新設計画を把握した時期について「自分が知ったのは1月20日の特区諮問会議の時点だ」と語った答弁だ。この日は、さまざまな段階を経て加計学園が晴れて事業者として公に認められた時である。
 諮問会議の議長でもある安倍首相は特区事業の進行状況を掌握すべき立場であり、発言は得心できない。
 まして安倍首相と加計氏は頻繁に会食やゴルフをしている間柄だ。加計学園の立ち位置を知らなかったとは到底考えられない。野党側が要求したように、加計氏を国会招致すべきだ。
 首相の意向が働いていたとする疑念の根拠は、昨年9月、前川喜平前文部事務次官が和泉洋人首相補佐官から「総理は自分の口から言えないから自分が言う」と、学部新設の対応を迫られたと証言している点だった。
 参考人として今回初めて出席した、「キーパーソン」とされる和泉氏は「記憶にないし、言っていない」の一点張り。面談の日時まで詳細に述べた前川氏と対照的だった。
 今のままでは、「加計ありき」で新設論議が進んでいたのではないかという疑念は拭えない。前川氏は了承しているのだから、和泉氏と共に証人喚問し、白黒決着を図る必要がある。
 学部の開学時期を昨年11月の段階で内閣府が「2018年4月」とし、加計学園しか応募できなかった。競合していた京都産業大が先日記者会見し「予期していない期日で難しかった」と断念の理由を明らかにしている。
 山本幸三地方創生担当相は「スピード重視。適切に効果を見るためだ」などと答弁したが、情報の伝わる時期にも差があり、前川氏は「極めて不公平だった」と指摘した。ここでも話が食い違った。
 民進党から新設計画の「白紙化」を促されたが、安倍首相は否定した。しかし、いったん、議論をリセットしないと、国民の信頼を取り戻せない事態にまで発展しているのではないか。もう限界だ。