奇妙な政治状況と言えまいか。安倍晋三首相の政権運営への逆風は強まっているのに、受け皿となる勢力が見当たらない。中でも野党第1党、民進党の責任は重いが、深刻な支持率の低迷が続く。
 共同通信が15、16日に実施した全国世論調査によると、安倍内閣の支持率は続落し、前回6月と比べ9.1ポイント減の35.8%だった。政党支持率を見ると、自民党は34.3%で2.4ポイント減らした。一方で民進党も前回10.4%から8.2%に下落した。
 多くの有権者が旧民主党政権時代の負の記憶を拭えず、民進党に選択肢としての期待感を抱けていないのだ。
 野田佳彦幹事長は25日、東京都議選(2日投開票)の惨敗を受けて引責辞任する意向を表明。蓮舫代表は新たな執行部人事に着手する考えを示したが、党内は結束するどころか不満が収まらず、再建の道筋は全く見えてこない。
 都議選では、加計(かけ)学園問題や「共謀罪」法成立を巡る強引な国会運営、稲田朋美防衛相の失言など民進党にとって有利な材料がそろっていた。
 にもかかわらず、自民批判票の受け皿は小池百合子都知事の「都民ファーストの会」にさらわれた。旧民主党時代に第1党だった勢力は5議席にまで落ち込んだ。
 蓮舫氏は「二重国籍」問題批判を受け、戸籍公表に踏み切った。疑惑払拭(ふっしょく)と続投の足場固めを狙ったのだろうが、有権者の目にはまたも内向きの争いが繰り返されたとしか映らなかったのではないか。
 党支持組織の連合との溝も浮かび上がる。共産党との選挙協力に否定的な連合に対し、蓮舫氏はできる限り進める方針だ。連合は残業代ゼロ法案を巡って安倍首相に直談判するなど「民進離れ」が現実味を帯びている。
 民進党は何をすべきか。これまで幾度も指摘してきたが、安倍政権に対抗しうる明確な旗印を掲げ、政策実現の展望を示すことに尽きる。党内で割れる憲法改正や原発政策への姿勢をまとめ上げ、「アベノミクス」に代わる経済政策を示すことが求められる。
 選挙戦略では地方組織の強化が欠かせない。旧民主党が上り調子だった時代に風頼みで当選した議員の多くは、地域に根を張り支持を固める努力を怠った。そのツケが党勢衰退に拍車を掛けたのだ。
 23日投開票の仙台市長選は野党4党が支援した元民進党衆院議員の郡和子氏(60)が初当選した。民進党主導で受け皿の構築に成功し、自民、公明両党などが推した新人を退けた。民進党単独の力不足は否めないものの、大型地方選の勝利は再生への足掛かりとなる可能性がある。
 来年12月までには次期衆院選がある。安倍政権の支持率動向によっては早まる可能性も否定できない。内輪もめに終止符を打ち、立て直しを急がねば、政権の選択肢からは遠のくだけだ。