厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会が、2017年度の地域別最低賃金の「目安」を決めた。全国平均で時給を25円引き上げ、848円とする。
 これを受け、各地方審議会が今後、地域の実情を踏まえ都道府県ごとに実際の引き上げ額を決めていく。
 上げ幅の目安25円は、これまでで最大だった16年度の実績と同額で、2年連続での「3%」アップとなる。とはいえ、政府が目標とする欧州先進国並みの水準「時給千円」には、まだまだ及ばない。
 働く人の4割を占める非正規労働者らの賃金の底上げにつなげ、格差の是正と個人消費の拡大を図るためにも、この流れを継続していける環境の整備に努める必要がある。
 安倍政権にとって、最低賃金の引き上げはアベノミクスを支える柱の一つだ。「年率3%程度」を目標に掲げ、5年連続で増額を実現。アップ額は計100円近くになる。
 そのことは、総じて賃金の底上げと消費の回復に寄与しているのだとしても、急激な引き上げに伴い、重大な「ひずみ」が生じている。その現実を直視せねばならない。
 一つは、目安額決定の仕組みが内包する問題と絡む地域間賃金差の拡大である。
 目安額は、所得や物価などを基に都道府県をA~Dの4ランクに分け示される。今回も上げ幅は東京を含むAが26円で、宮城が入るCは24円、東北5県が含まれるDは22円。AとDとでは毎年3、4円ずつ賃金差が広がる。
 12年度に197円だった東京と岩手の賃金差は、16年度(東京は932円、岩手は716円)に216円へと拡大している。これでは若者が大都市に流出し、地方の人手不足に拍車がかかりかねない。
 Dランクの県は今回、目安通りに改定されても700円台前半にとどまる。月給にすれば12万円程度。生活を安定的に維持するには、なお厳しい水準と言わざるを得ない。
 下位ランクほど手厚い引き上げ策が要る。現行制度の見直しを含め、地域間格差の是正に向けた議論は不可欠だ。
 もう一つ、見逃してならないのは、中小・零細企業にとって、人件費の負担がかつてないほど増していることだ。
 厚労省の調査で最低賃金額より低い水準で働いていた労働者の割合が16年度は2.7%と、過去10年で最多だったという。違法であり、あってはならないことだ。だが経営体力の弱い企業が毎年の引き上げについていけなくなっているのだとしたら、問題だ。
 デフレ脱却と経済の好循環に向け、本来は民主的なプロセスで決まる中央審議会の議論に介入してまで、大幅引き上げを実現してきたのは安倍政権だ。であるなら、その確実な履行も政権の責任で担保しなければなるまい。
 経営基盤の強化につながるような、実効性ある中小企業支援策に知恵を絞るべきだ。