遅きに失した以外の何物でもない。南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題を巡り、稲田朋美防衛相がきのう、引責辞任に追い込まれた。
 この期に及んで、辞めて済むような問題ではないのは明らかだ。隠蔽了承や虚偽答弁の疑惑を曖昧にしたままで、「幕引き」は断じて許されない。稲田氏はまず、国会の閉会中審査に応じて説明責任を果たすべきだ。
 内閣がもたないと、切羽詰まった安倍晋三首相が最後に引導を渡したのだろう。抜てきした「秘蔵っ子」の度重なる失態に目をつぶり、かばい続けてきた任命責任者としてのけじめは避けられない。
 この問題は、防衛省が日報の情報公開請求に対して「破棄済み」として不開示にしたが、その後、電子データが陸上自衛隊内に保管されていたことが発覚した。稲田氏はデータが残っていたとの報告を受け、最高幹部の緊急会議で非公表を了承したとされる。
 特別防衛監察では、稲田氏がデータ保管の説明を受けた可能性は否定できないとした上で、非公表の方針を了承した事実はないと結論付けた。幹部の関与は認定したものの、「玉虫色」の結果だった。
 特別防衛監察は制度上、防衛相ら政務三役は対象外だが、今回は稲田氏が疑惑報道を受けて聴取される異例の展開となった。渦中にあるトップが命じた監察結果にどれだけ信ぴょう性があるだろうか。「茶番劇」と受け取られても仕方があるまい。
 しかも担当した防衛監察本部は防衛相直轄の組織で、手足となるのは身内の自衛隊員だ。真相解明には中立的な外部の目が不可欠で、今後、国会や第三者機関による徹底的な調査、検証が求められる。
 なぜ、日報の存在を隠そうとしたのかも、不透明なままだ。昨年7月、首都ジュバで起きた政府軍と反政府勢力との大規模な武力衝突について「戦闘」という言葉を使っていたことと無関係であるまい。憲法との整合性が問われることを恐れたのではないか。
 稲田氏が追い込まれた背景には「背広組」の事務方幹部と「制服組」の陸自幹部との激しい対立があるとされる。制服組は「陸自ばかりが悪者にされ責任を取らされる」と不満を募らせていたという。
 防衛相が背広組も制服組も統率できない現状は、文民統制(シビリアンコントロール)の根幹を脅かす由々しき事態である。組織ぐるみの形で国民の知る権利をないがしろにした責任も極めて重い。
 安倍首相は、資質に欠ける稲田氏の更迭に踏み切らなかったことが「傷口」を大きく広げ、深刻な事態を招いたことを真摯(しんし)に反省すべきだ。
 本をただせば、「1強」のおごりに他ならない。加計(かけ)学園問題もしかり。「臭い物にふた」の姿勢を変えなければ、国民からの信頼が地に落ちるのは目に見えている。