失った信頼を取り戻すのは容易なことではあるまい。
 高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」創設を含む労働基準法改正案を巡って、迷走した連合のことだ。
 残業代がゼロになり、過労死を助長しかねないと、一貫して反対してきたにもかかわらず、健康確保対策の強化を条件に事実上の容認に転じ、法案を修正することで、いったんは政府と合意した。
 だが、その方針転換は十分な組織討議を経ておらず、共に反対してきた民進党、過労死で家族を失った人たちとの議論や調整もなく唐突に過ぎた。傘下の労働組合などから「認められない」「裏切りだ」との強い批判が噴出した。
 予想以上の反発を受け、今度は容認姿勢を撤回。経団連を加え予定していた政労使による修正合意を見送った。
 政府と水面下で交渉し、混乱を招いた連合執行部の責任は重大だ。労働組合の中央組織として、働く人たちの権利と暮らしを守るというその原点を見失ったに等しい。「独走」を猛省すべきである。
 もっとも、政府による「からめ手」からの攻めはしたたかだった。格差是正を図る同一労働同一賃金と共に、残業時間の上限規制を盛り込んだ「働き方改革関連法案」と、労基法改正案を一本化し、秋の臨時国会で一括審議するとの戦術をちらつかせた。
 長年の悲願である残業上限規制の実現を「人質」に取られ、連合は改正案で譲歩を迫られた形だ。国会で与党が多数を占め法案成立が見込まれる中、少しでも改善できるならと修正を求めたとされる。
 だが政労使合意見送りを受けても、政府は連合が求めた健康確保措置を盛り込み法案を修正した上で、従来方針通り、働き方改革関連法案との一括成立を目指すという。
 しかし、この一括審議にはそもそも矛盾がある。一方は残業に上限を設け労働時間規制を強化しようとする動きであるのに対し、他方は、その労働時間規制の緩和であり、規制に「例外」を設けようという取り組みである。
 真逆の事柄なのだから、本来、別々に国会に提出され審議されてしかるべき案件だ。政府に強く再考を求めたい。
 残業代ゼロは、認め難い。連合の修正要求も形ばかりの内容といえる。健康確保対策とした年間104日の休日確保義務付けは週休2日制にすぎず、働く時間の制限はない。臨時の健康診断を含め追加された措置も不十分で、過労死の危険は消えていない。
 しかも、いったん導入されれば、年収要件が引き下げられ対象職種が拡大される恐れを否定できない。
 連合は反対に「回帰」した。働く人たちの命と健康を守るために、民進党を含む同志とスクラムをどう組み直し、手ごわい政府といかに渡り合うか。信頼の回復に向け、その行動が問われている。